「今」、だから必要な技術のセミナー ~ 「伝える技術の活用セミナー」(令和4年度 第4回KEK技術セミナー)~

藤崎聡美さんとセミナーの様子

一言で「技術」と言ってもいろいろあり、KEKにもさまざまな技術を駆使して仕事をする多くの技術者がいますが、この技術セミナーは、「伝える」技術についてのものでした。インターネットが発達し、リモート会議などが定着しつつある「今」、だから伝える技術が必要な技術であることは、皆さんもご理解いただけるでしょう。その一方、実際にスライドや動画を作り、それをプレゼンして、もう少し良いものができないかな、見る人たちにうまく伝えたいな、などと感じている方も多いのではないでしょうか。

令和4年度第4回KEK技術セミナー「伝える技術の活用セミナー」が、令和5年2月28日に、オンライン会議システム『Zoom』とKEK3号館セミナーホールの同時中継による形式で開催されました。講師は、藤崎聡美さん(岩手大学 技術部理工学系技術部 技術専門員)と一條肇さん(東北大学 事業支援機構 総合技術部 技術専門員)でした。お二人は異なる大学や研究所の有志5名からなる“Go-You”というグループで「伝える技術」を全国的にサポートする活動をされています。

第1部は藤崎さんによる「伝わりやすいスライドづくり」のセミナーでした。初めにスライドで伝える目的を把握して要素を抽出し、情報を整理して情報ノイズ(表現したい事としている事に違いがあること)を減らすべきだとのことでした。続いて主に四つのテーマについてのアドバイスがありました。「色の使い方」では色相環・同系色・補色の説明とその利用の仕方、原色でなく柔らかい色調を薦めるとのこと、「フォントの選び方」ではゴシック体と明朝体の説明や輪郭を使った例の紹介など、「配置の仕方」では見る人の目の動きや区画を考えたり、タイトルを初めに決めたりする、「図の作り方」では言葉の印象通りに表現するとよい、などなどでした。

質疑応答では、オンラインでのプレゼンを見るとオンサイトで(会場で)見るより小さい文字が使われるが、どの程度の大きさが良いか、との質問に対し、プレゼンの方法もいろいろあるので大きさを一概には決められないが、タイトルよりも本文に大きい文字を使う場合は理由が必要になり、一方本文の文字が大きいと文が短くなるので、例えば本文の一部の文字の大きさを変えるなど、バランスを考えて決めるべきだ、との回答でした。またゴシック体の大きいサイズは印象が強いので、使用するのに注意が必要、とのことでした。

第2部は一條さんによる「伝わりやすい動画と配信」のセミナーでした。初めに作業として構成・撮影・編集・配信の流れがある事、一方作業依頼(または発注)を受ける場合は依頼側が構成・撮影を済ませた場合があることなどの説明や、配信までの作業[全8工程で撮影前に3工程(ヒアリング、構成、シナリオ)必要]の紹介がありました。その後伝わりやすい動画とは特に「見る側のことを考えて作られた」動画で、その中に「自分たちが見せたいこと」をどこまで入れるか、伝えるには多少のテクニックやセオリーが必要だ、とのアドバイスがありました。セミナーでは他に、静止画をつなげて製作する動画の悪い例と良い例の実際の映像での紹介があり、悪い例の問題点、良い例のシナリオの説明、などがありました。

質疑応答では、動画制作の各工程の所要時間について、企画・構成・ヒアリングが6~8割とのこと(例えば企画・構成2~3時間で完成動画1.5時間(0.5時間×3本))でした。カラーグレーディング、色合わせ、輝度の上げ方についての質問には、明度を上げるのが主であること、また完成動画よりも大きめのファイルで撮影して、後で修正する、との回答でした。自分の撮影は必ずハイビジョン以上で撮るが、依頼元の提供サイズは様々で、フォーマットはmp4が主流になっているとのことでした。最後に、使用しているソフト、動画素材、音素材、撮影機器などを紹介いただきました。

セミナー参加者はKEK66名(事務系含む)、外部19機関70名、総研大1名で合計137名にも上り、盛況でした。

今後も技術セミナーではいろいろな企画を考えていきますので、どうぞご期待ください。

一條肇さんとセミナーの様子

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