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高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、自然界にはたらく法則や物質の基本構造などを探求する研究機関です。素粒子原子核研究所、物質構造科学研究所、加速器研究施設、共通基盤研究施設、量子場計測システム国際拠点、J-PARCが連携して研究を行っています。

極微の世界から宇宙までを多面的に探究する

素粒子原子核研究所(IPNS)

全ての物は細かく見ていくと、分子、原子、原子核、そして素粒子に辿り着きます。素粒子は、これ以上分けることのできない物質の最小単位です。素粒子や原子核のように極微な物の性質を理解することは、広大な宇宙誕生の謎を解明する重要な手がかりです。素粒子、原子核という極微な世界から広大な宇宙までの幅広い分野に対して、理論及び実験の両側面からの総合的研究を行っています。

研究の例

  • 宇宙の謎をひも解く新物理を探す / SuperKEKB/Belle II実験
  • 人類未到の高エネルギーで新物理の発見を目指す / エネルギーフロンティア実験
  • 基礎物理学の究極理論を探し求める / 理論研究

物質の構造と機能を加速器で知る

物質構造科学研究所(IMSS)

電子加速器から発生する放射光や陽電子、陽子加速器によってつくり出される中性子やミュオンなどの量子ビームを利用し、原子レベルから高分子、生体分子レベルにいたる幅広いスケールの物質構造と機能を総合的に研究しています。また、ビーム生成、利用技術などの開発研究を通して、幅広い物質科学の発展に貢献しています。

研究の例

  • 光触媒表面の原子の並びを調べる / 陽電子回折実験
  • 小惑星リュウグウのかけらをみる / 放射光実験・ミュオン実験
  • 基礎生物学から疾病の原因追求、創薬への貢献 / クライオ電子顕微鏡実験・放射光実験
  • アジアに胃がんが多い理由の解明 / 放射光実験

加速器の設計・運転そして次世代型の開発

加速器研究施設(ACCL)

KEKのさまざま研究に使われる粒子加速器の設計・建設・運転維持・性能向上を図っているほか、次世代の研究を担う最先端の加速器の開発研究を国際的に行うとともに、加速器の産業・医療等への応用、また超伝導技術など高度な加速器技術の一般産業への提供等、幅広い活動を推進しています。

研究の例

  • SuperKEKB、フォトンファクトリー、フォトンファクトリー・アドバンスドリングの運用
  • 大強度陽子加速器の運用と性能向上
  • 医療用試験加速器iBNCTの運用
  • エネルギー回収型リニアックcERLを用いた応用研究 / 応用超伝導加速器イノベーションセンター(iCASA)
  • 国際リニアコライダー(ILC)の実現にむけた技術開発

大型加速器の運用を支え技術の地平を切り拓く

共通基盤研究施設(ARL)

大型加速器施設の運用に欠かせない計算科学や放射線科学、超伝導低温、機械工作などの基盤技術を研究しています。高い基盤技術を用いて、放射線・環境安全管理、コンピューターやネットワークの管理運用、液体ヘリウム等の供給、機械工作などの支援業務を行っています。

研究の例

  • 加速器施設の放射線安全・環境安全の保守 /放射線科学センター
  • 実験装置の設計・製作、機械工学関連の研究 / 機械工学センター
  • 世界最高レベルの放射線シミュレーション計算コード開発 / 計算科学センター
  • 超伝導磁石や極低温機器の開発研究、建設、運転 / 超伝導低温工学センター

新しい『眼』を人類にもたらす

量子場計測システム国際拠点(QUP)

素粒子物理、宇宙物理、物性物理、計測科学、システム科学を融合し、量子場計測システムという研究「手段」を研究しています。宇宙・素粒子について計測する新しい原理の発明から、それを実現するシステムの開発、プロジェクト実行までを一貫して行っています。

研究の例

  • 宇宙の始まりの量子場を見る / LiteBIRD計画
  • 身の回りの量子場を見る / 「暗黒物質」の探求

大強度陽子ビームの強みで多彩な研究

大強度陽子加速器施設(J-PARC)

世界に開かれた多目的利用施設として、世界最高クラスの陽子ビームで生成する中性子、ミュオン、K中間子、ニュートリノなどの多彩な2次粒子ビームを利用して素粒子物理、原子核物理、物質科学、生命科学など幅広い分野の研究を行っています。高エネルギー加速器研究機構(KEK)と日本原子力研究開発機構(JAEA)が共同運営しています。

研究の例

  • ニュートリノで調べる物質・反物質の謎 / T2K実験
  • 素粒子・原子核・核力を研究し宇宙の成り立ちを探る / ハドロン実験
  • 未来の電池の電気の流れを捉える / 中性子回折実験
  • 太陽光発電の性能向上を目指す / ミュオン実験

KEKの研究とノーベル賞

写真左:小林誠博士 / 写真右:アダ・ヨナット博士

KEKはノーベル賞との係わりが深い研究機関です。過去にはノーベル賞と直接、間接に結び付いた研究がいくつも行われてきました。また現在も、ノーベル賞にこれから結び付きそうな先鋭的な研究が多数行われています。

2008年の物理学賞で小林誠博士と益川敏英博士の受賞理由となった小林・益川理論を実験的に証明したのが、KEKのBファクトリーで行われたBelle実験です。Belle 実験では2001年、電子と陽電子を衝突させてできたB中間子と反B 中間子が崩壊する様子のわずかな違いを実証して、小林・益川理論の正しさを証明しました。

また2009年には、KEKのフォトンファクトリーに10年近く通って実験を行ったイスラエルのアダ・ヨナット博士が、タンパク質の製造工場ともいえるリボソームの構造を解明した功績でノーベル化学賞を受賞しました。1980 年代なかば、放射光でタンパク質の構造を調べるワイゼンべルクカメラがフォトンファクトリーに完成したことを知ったヨナット博士が、いち早く利用申請書を提出したことがKEKでの実験の始まりでした。

2014年のノーベル物理学賞は青色発光ダイオード(青色LED)を開発した赤崎勇博士、天野浩博士、中村修二博士が受賞しました。フォトンファクトリーでも、赤崎博士、天野博士の研究室で作製された窒化物半導体試料の構造研究が行われました。

オートファジーの仕組みの解明でノーベル生理学・医学賞を2016年に受賞した東京工業大学の大隅良典栄誉教授らの共同実験グループも、フォトンファクトリーで実験をしています。

最終更新日 2024/04/02