茨城県つくば市が主催する「つくばメディアアートフェスティバル2025」が8月1日、つくば駅前の茨城県つくば美術館で始まりました。KEKに滞在して研究者や学生と交流する「KEKアーティスト・イン・レジデンス2025(KEK AiR 2025)」に参加したアートユニット「片岡純也+岩竹理恵」の作品も特別展示されています。
2人の作品は「KEK曲解模型群」というタイトル。加速器で使われるフレミングの左手の法則や、波・粒・力の関係性など滞在期間に得たインスピレーションを基にした四つの作品でできています。
作品の一つは、KEK素粒子原子核研究所の松原隆彦教授が計算した筆跡が載った黒板が回転し、同時に紙飛行機が黒板をすり抜けるという不思議なものです。3次元的な造形である紙飛行機を真後ろから見ると2次元の「Tの字」の字になることも併せて「次元を超える」イメージの作品です。

1日午前に会場に一番乗りした松原教授は「自分の書いたものが美術作品になるとは考えもしなかった」と驚き、何度も写真を撮っていました。
午後には浅井祥仁機構長と長野裕子管理局長も会場を訪れました。浅井機構長はフレミングの左手の法則から発想された作品が好みで「(アーティストの発想や考え方は)我々に近い感じがしました。紙飛行機が次元を超えている作品もおもしろい」と話しました。

枝を伸ばした木を宇宙進化の進化になぞらえ、金属パイプを経て根本に骸骨の模型をつなげた作品もあります。木は横倒しになっていますが、この高さはKEKの加速器のビームパイプの高さをイメージしたものだそうです。また骸骨を支えている台は、KEK滞在中に使わなくなった資材を片岡さんが見つけて活用しているものです。

テニスボールを使って波動を表現した作品もあります。テニスボールはKEKとは直接関係しませんが、KEK滞在中に宿泊した宿舎の前にテニスコートがあったことが印象的で入れたのだそうです。「滞在制作をするときに個人的な体験を入れているということをしています」と片岡さんはいいます。
会場では片岡さん、岩竹さんの「滞在ノート」も配布されています。ノートには2人と交流した松原教授とKEK加速器研究施設の細山謙二ダイヤモンドフェローの言葉も掲載されています。
「KEK曲解模型群」は8月10日までの9時30分~17時、茨城県つくば美術館で展示されます(入場無料、8月4日は休館)。作品は大阪まで輸送され、8月14~20日、大阪・関西万博の政府展示「エンタングル・モーメント」で展示されます。