春のキャンパス公開2025を開催しました

4月18日の「発明の日」を含む月曜日から日曜日は文部科学省が定める科学技術週間です。この期間には、全国の各機関で科学技術に関するイベントなどが実施されています。

高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、4月19日(土)につくばキャンパスの公開を行いました。当日は晴天に恵まれ、427人が来場しました。 

今回のキャンパス公開では、実験施設の見学ツアー、研究者と直接話せる「サイエンスカフェ」、超伝導コースターの実演、ゲームラリーやアート展示など、幅広い世代が楽しめる企画を多数用意しました。当日の様子をご紹介します

施設見学バスツアー

シャトルバス2台を運行し、来場者を見学施設まで案内しました。

今回公開した施設は、宇宙初期に起こった現象を再現して未知の粒子や力の性質を明らかにするBelle II測定器と、加速器から発生する明るく波長の短い「放射光」で物質を原子のスケールで観察するフォトンファクトリー(PF)の2カ所です。
見学ツアーでは、参加者から多くの質問が寄せられ、研究者の説明に熱心に耳を傾けながらメモを取る様子も見られました。

サイエンスカフェ

 研究者の素顔や研究の面白さに触れられる人気企画「サイエンスカフェ」。今年も幅広いテーマで4つのセッションを開催しました。来場者はお茶やコーヒーを片手に、気軽な雰囲気の中で研究者の話に耳を傾けました。

1杯目
「素粒子について友達に話せるかな? ー絵本、たくさんのふしぎ『小さな小さな粒、素粒子のはなし』ー」

 登壇者:藤本 順平シニアフェロー(KEK 素粒子原子核研究所)
 ファシリテーター:山﨑 洋輔(KEK広報室)

 科学絵本誌『たくさんのふしぎ』2月号の著者・藤本先生が登壇し、「素粒子」をテーマに執筆した『小さな小さな粒、素粒子のはなし』を使って、難しい素粒子の世界をやさしく解説。小学生でも楽しめる内容に、大人の来場者も新たな視点を得る機会となりました。

2杯目
「量子って何?」

 登壇者:橋本 省二教授(KEK 素粒子原子核研究所 理論センター)
 ファシリテーター:菊池 まこ(KEK素粒子原子核研究所 広報)

量子力学誕生100周年の今年、「量子とは何か?」という根本的な問いを歴史とともにひも解きました。参加者への問いかけや対話を交え、「量子」のイメージについて紹介しました。

3杯目
「大学院って実際どう?総研大生のリアル、大公開!」

 登壇者:窪田 雅弓さん(加速器科学コース)、三木 宏美特別助教(物質構造科学研究所/物構研修了)、長谷川 聡美さん(素粒子原子核コース)
 ファシリテーター:青木 優美(KEK広報室/総研大修了)

KEKは大学院大学「総研大」の教育拠点でもあります。このセッションでは、現役大学院生と修了生が登壇し、研究内容から進路、大学院生活までを語りました。大学院進学を検討中の方にとって、進路選択の参考になる内容となりました。

4杯目
「光触媒の表面でいま何が?~量子ビームだから見える世界」

 登壇者:阪田 薫穂准教授(KEK物質構造科学研究所)
 ファシリテーター:大島 寛子(KEK物構研広報)

 水素エネルギーの鍵を握る「光触媒」をテーマに、量子ビームを使って反応の仕組みを原子レベルで明らかにする研究が紹介されました。放射光を使って、目には見えないミクロの世界を「視る」ことで、カーボンニュートラルの実現にどう貢献できるかについて語られました。

超伝導コースター

液体窒素で冷やした超伝導体が、磁石のレールを滑走する「超伝導コースター」の実演も行われました。特に家族連れに人気を集め、子どもたちがコースターを操作しながら、科学の不思議を体験していました。

ゲームラリー「素粒子をさがそう」

キャンパス内に隠された17種類の素粒子ぬいぐるみを探すラリー形式のゲームです。参加者はワークシートに素粒子の名前と「得意技」を記入してゴールを目指しました。子どもから大人まで、多くの方が夢中になって楽しんでいました。

KEKアーティスト・イン・レジデンス2025 ミニ個展

KEKでの研究滞在を通して作品を制作する「KEK アーティスト・イン・レジデンス2025」の一環として、アーティストのこれまでの作品を展示するミニ個展も開催されました。
 当日はアーティスト自身が、来場者に作品の背景や制作意図について直接説明する場面もあり、科学と芸術のつながりを感じられる貴重な機会となりました。

総研大コーナー

総合研究大学院大学(総研大)の教育内容を紹介するコーナーも設置され、教員と現役大学院生が来場者の質問に対応しました。大学院進学を目指す学生や保護者の方々にとって有益な情報交換の場となりました。

常設展示・企画展示

コミュニケーションプラザの常設展示では、研究者が来場者の質問に答えました。加えて、国際交流センター内ギャラリーでは企画展「加速器 ― The accelerators ―」をお披露目。 KEKの加速器のあゆみを、実物パーツや航空写真、パネル展示で紹介。現在から未来へとつながる加速器の姿をわかりやすく伝えています。多くの来場者が足を止めて解説を読んでいました。

科学おもちゃ 

加速器のしくみを模したおもちゃの展示も登場。粒子が加速する様子を視覚的・体感的に学べる内容で、子どもから大人まで興味津々の様子でした。

グッズ販売・キッチンカー・珈琲販売

会場では、株式会社BCC(ビー・シー・シー)やおたさく商事によるKEKオリジナルグッズや科学グッズの販売も行われ、来場記念にと多くの方が立ち寄っていました。
また、「科学の街のコーヒー屋」もっくん珈琲による自家焙煎のスペシャルティコーヒーも提供され、コーヒーの香りが漂いました。KEK寄附付き商品の『素粒子珈琲ドリップバッグ』も販売され、来場者の関心を集めていました。
さらに、TSUTAYAデイズタウンつくばによるKEKの研究者の著書や関連書籍の販売コーナーも設置され、科学絵本誌『たくさんのふしぎ』2月号の著者・藤本先生によるサイン会も実施。科学の世界により深く触れられる機会となりました。

今回の春のキャンパス公開2025を通して、多くの方にKEKの研究と科学技術に親しんでいただくことができました。来場いただいた皆さま、ありがとうございました。

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