2027年の実験開始を目指し、岐阜県飛騨市神岡町で建設が進むハイパーカミオカンデ実験について、ホスト機関の東京大学と高エネルギー加速器研究機構（KEK）はこのほど、カナダのビクトリア大学との覚書を締結しました。同実験には、日本を含めて世界22カ国が参加・協力を表明していますが、現在日本との覚書が締結されているのは、ポーランド、スペイン、イタリア、カナダの4カ国となります。
覚書の締結は各機関の持ち回りで行われ、東京大学の藤井輝夫総長、KEKの浅井祥仁機構長、ビクトリア大学のフレーザー・ホフ（Fraser Hof）研究推進副部長がそれぞれ、2024年7月下旬までに署名しました。
カナダ側で同実験に参加するのは、ブリティッシュコロンビア工科大学、カールトン大学、カナダ国立粒子加速器センター（TRIUMF）、レジーナ大学、ビクトリア大学、ウィニペグ大学、ヨーク大学の7研究機関です。覚書には、カナダ側がハイパーカミオカンデ検出器の光センサー（マルチPMTモジュール）や写真測量法を用いた較正システム、水質モニタリングシステムなどを担当して実験に参加することなどが明記されています。また、中間水チェレンコフ検出器（IWCD）の開発協力については、KEKとビクトリア大学が2022年11月、覚書をすでに締結しています。
ハイパーカミオカンデは、現行のスーパーカミオカンデの約8倍の有効質量を持つ巨大水タンクとそのタンクの中に並べる超高感度光センサーからなる実験装置で、陽子崩壊の発見やニュートリノのCP対称性の破れ（ニュートリノ・反ニュートリノの性質の違い）の発見、超新星爆発ニュートリノの観測などを通し、素粒子の統一理論や宇宙の進化史の解明を目指します。同事業は2020年2月、日本で最初の予算が成立して正式にスタート。2022年11月から本体空洞の掘削を開始し、2023年10月にドーム部分の掘削が終了するなど建設が本格化しています。