KEK公開講座2023秋のアンケートの質問にお答えします

11/11(土)に開催した公開講座「はやぶさ2からの贈り物~小惑星リュウグウの石からわかったこと」に出席された方から寄せられた、アンケートの質問に対する講演者の回答を掲載します。

アンモニアの話はとても面白かったです。アンモニア以外にもどこら辺から来たものかわかる分子はあるのでしょうか?

太陽から遠方な位置(外側太陽系)では、岩石と、揮発性物質が固体となって共存した氷天体が存在すると一般的に言われています。この揮発性物質として重要なのが、水、二酸化炭素、メタン、アンモニアなどです。これらはいずれも真空下での沸点が低い分子であり、その沸点は、水 > 二酸化炭素 > アンモニア > メタンの順序になっています。これらが惑星形成時に存在すれば、後者のものが存在するほど、その惑星は太陽より遠い位置で生成したと推定されます。

リュウグウの有機物の起源に関心をもった。どこから来たのでしょう?

リュウグウ中の有機物は、非常に多様な物質からなっており、現在でも多くの研究が進行中です。リュウグウ中に残っている有機物は固体有機物に限られますが、それらには大きく分けて、リュウグウ母天体の形成前から星間物質として存在していたものと、リュウグウ母天体中で液体の水が存在していた時に反応して生成したものの2種類が存在しています。後者の反応は、その水のpHや酸化還元状態に依存すると考えられ、生命の素を作る有機物の進化に迫る研究として注目されます。これらについて、KEKのX線顕微鏡などを用いて多くの研究がなされています。

惑星の軌道変異については初めて耳にしました。どのような概要なのでしょうか?

初期太陽系で起きた惑星の移動については、現在でも多くの研究が進行中ですが、その1つのグランド・タック仮説では、太陽系形成から100万年以内に木星や土星などの巨大ガス惑星が内側太陽系に移動したと考えられています(その後、外側太陽系に再移動)。また別のモデル(ニース・モデル)では、太陽系形成後数億年の間に、巨大ガス惑星と巨大氷惑星が移動したと考えられています。このような惑星移動が実際に起きたかどうかについて、現在内側太陽系に存在するリュウグウが揮発性物質を保持していることは、リュウグウが元は太陽系外側で形成したことを示す結果として重要です。