発光イメージングを用いてミュオンビームの分布計測に成功:ビームの精度管理や素粒子研究への応用に期待

図3. 正のミュオンビームをプラスチックシンチレータに照射しながら高感度CCDカメラを用いて撮像した崩壊前のミュオン発光画像のミュオンビームエネルギーによる違い

名古屋大学
大阪大学
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
J-PARCセンター

概要

名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻の山本誠一教授、平野祥之准教授、大阪大学大学院理学研究科化学専攻の二宮和彦助教、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の河村成肇特別准教授の研究グループは、発光イメージングを用いてミュオンビームの分布計測に成功しました。
ミュオンは素粒子の一つで、加速器で大量に発生させることにより、超伝導物質の性質解明、考古物への元素分析など様々な分野で利用されています。このような利用研究を一層進めるには、ミュオンのビームがどのような強度や分布で飛来しているのかをモニターすることが必要です。これまでミュオンビームや、崩壊して生成される陽電子のモニター方法は限られていましたが、ミュオンビームをイメージング技術の応用により可視化することができれば、ビームのエネルギーやその広がり、ビーム幅など多くの情報を簡便に得られる可能性があります。
正電荷のミュオンビームを水に照射すると陽電子によるチェレンコフ光を発生させることができます。研究グループは、高感度CCD カメラを用いてそのイメージングを試みました。その結果、楕円形に分布する鮮明なチェレンコフ光画像を得ることに世界で初めて成功しました。またプラスチックシンチレータにミュオンビームを照射しながら撮像したところ、崩壊前のミュオンビームの分布をイメージングすることにも成功しました。これらの画像から、ビームのエネルギーや、その広がり、幅など多くのビームに関する情報が得られることが確認できました。この技術は今後、ミュオンビームの精度管理や素粒子研究など幅広い分野への応用が期待されます。

本研究成果は、2020 年11 月26 日付オンライン科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。

研究成果のポイント

  • 高輝度ミュオンビームを水に照射しながらCCDカメラでビームを撮像することで、ミュオンが崩壊して生成する陽電子のチェレンコフ光イメージングに、世界で初めて成功した。
  • またプラスチックシンチレータに照射しながら撮像することで、崩壊前のミュオンビームのイメージングにも成功した。
  • 今後、光計測を用いたイメージング法が、ミュオンビームの精度管理や素粒子研究など幅広い分野に応用されることが期待される。

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