九州大学
高エネルギー加速器研究機構
千葉大学
東海国立大学機構
名古屋大学
概要
FASER国際共同実験は2017年に発足し、素粒子標準理論の背後にある未知の物理法則を探るため、暗黒物質の解明に繋がる素粒子の発見と未開拓の高エネルギー領域のニュートリノの研究を目指しています。世界最高エネルギーで陽子を正面衝突させる欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロンコライダー(LHC)において衝突点からビーム軸方向に生成する粒子群に着目し、480m地点の既存のトンネルを改造して検出器を配置した特色ある実験です。
ニュートリノは非常に高い透過力を持つため測定は容易ではありません。衝突型加速器が生成するニュートリノの検出は世界初の取り組みとなり困難の連続でした。LHCの第2期運転の最終年となる2018年に写真乾板を用いた小型検出器を設置してニュートリノの測定に挑戦しましたが決定的な結果には至りませんでした。本研究ではLHCの第3期運転(2022-2025)に向けて開発したFASER検出器によって、LHCの生成するニュートリノの存在に対して十分な確度での観測が実現できました。この成果には日本が主導するシリコン検出器が極めて重要な役割を果たしています。衝突型加速器を用いたニュートリノ実験の創始となり、高エネルギーニュートリノに現れる素粒子標準理論を超えた物理の検証が可能となりました。将来計画となる大型施設(FPF: Forward Physics Facility)の具体化も進展が期待できます。
FASER国際共同実験は日本からの若手研究者が中核として推進し、九州大学先端素粒子物理研究センターの音野瑛俊助教、高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所の田窪洋介研究機関講師、清華大学の稲田知大博士研究員、九州大学基幹教育院の有賀智子助教、河原宏晃学術研究員、千葉大学・ベルン大学の有賀昭貴准教授、早川大樹特任助教、名古屋大学の佐藤修特任准教授、中野敏行准教授、中村光廣教授、六條宏紀特任助教などが参加しています。
本成果は2023年3月19日(日)に国際会議Moriond EW 2023で発表しました。
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