大阪・関西万博の政府展示「エンタングル・モーメント [量子・海・宇宙]×芸術」が8月14日、始まりました。KEKに滞在して研究者や学生と交流する「KEKアーティスト・イン・レジデンス2025(KEK AiR 2025)」に参加したアートユニット「片岡純也+岩竹理恵」の作品も展示されています。
13時の開場前には長い列ができ、会場はかなりの人出です。来場者はまず、量子力学ならではの「重ね合わせ」や「もつれ」を表現したアートに出迎えられます。量子コンピューターや量子暗号通信、量子センシングの仕組みを感じる展示などが並び、大勢の来場者が量子の不思議な世界に浸っています。

KEKは順路最後に位置する「宇宙」のコーナーに、研究者との対話を通じて2人が制作した「KEK曲解模型群」を展示しています。加速器で使われるフレミングの左手の法則や、波・粒・力の関係性など滞在期間に得たインスピレーションを基にした四つの作品でできています。

作品の一つ「すり抜ける紙飛行機」は黒板が回転し、同時に紙飛行機が黒板をすり抜けるもので量子力学の「トンネル効果」も思わせます。これは、光の粒である光子などミクロの粒子は波としての性質も併せ持つという「二重性」によるもので、今回の展示の大きなテーマとも符合しています。
作品は8月10日まで茨城県つくば美術館でつくば市主催の「メディアアートフェスティバル2025」で初公開され、大阪に輸送されました。
「宇宙」コーナーのKEKの向かい側の壁では14日午後、京都大学の橋本幸士教授が相対性理論と量子力学をつなぐ理論として注目される超弦理論の式を黒板に刻むイベントも行われました。

「エンタングル・モーメント」は20日までの毎日、万博会場南西にあるイベントホール「WASSE」で10時から20時まで開催しています(最終日の20日は18時まで。入場は閉館の30分前まで)。西ゲートのご利用が便利です。
「エンタングル・モーメント」会場の中央部にあるステージでは、17日15時30分~17時、KEK素粒子原子核研究所の企画で「見えない世界を知るために―量子・宇宙」というイベントを開催します。
同じ17日18時30分~19時30分には、アートユニット「片岡純也+岩竹理恵」の2人と齊藤直人KEK素粒子原子核研究所長も登壇する「研究者×アーティストトーク」も予定されています。
また同じ「WASSE」の隣の区画で同時に開催されている「わたしとみらい、つながるサイエンス展」にもKEKは参加しています。18日13時~13時30分、KEK物質構造科学研究所の下村浩一郎特別教授も登壇する「素粒子ミュオンがひらく未来 ~科学×アートのアプローチ~」というイベントが予定されています。