KEK史料室と自然科学研究機構の核融合科学研究所(NIFS)核融合アーカイブ室が主催する「自然科学系アーカイブズ研究会」が、9月17日と18日の2日間、つくばキャンパス4号館のセミナーホールで開催されました(オンライン同時開催)。

この研究会は、2009年からKEK史料室とNIFS核融合アーカイブ室、国立極地研究所、国⽴科学博物館の企画により開催され、近年では毎年2回、KEKとNIFSで各1回開催されています。総合研究大学院大学(総研大)のグループ研究「新分野の開拓」の1グループであった「大型装置科学の科学論」の研究活動の流れを汲み、主に人文科学や社会科学の領域に位置づけられがちな「アーカイブズ学」の考え方を自然科学の領域にも広げることを目的としています。機構長在任中にKEKでの史料室の設立に尽力した菅原寛孝KEK名誉教授は、総研大の理事に就任した際にも各共同利用機関にアーカイブズの構築を呼びかけるなど、長年にわたり研究施設における資料管理の重要性を唱えてきました。こうした経緯から、KEKは史料室を中心に自然科学領域でのアーカイブ活動の拠点となっています。現在、大学や科学研究機関に史料管理を行う施設・部署が設けられる中で、当研究会では全国のアーカイブズ施設の研究者などを中心に多彩な研究事例の報告が行われています。
今回は、「国際協力研究と共同利用研究所」をテーマに、3つの基調講演と14の研究報告が行われました。冒頭、足立伸一KEK理事が開会の挨拶に立ち、主催の史料室が2025年に内閣府の「歴史資料等保有施設」に指定されたことなどに触れながら、今回のテーマに則して国際協力や共同利用という特徴的な仕組みを巡り、論文には載らない研究を築き上げた過程や役割の記録が将来の科学史に果たす重要性を指摘。2日間の発表を通じて「国際協力研究や共同利用研究所がどのように生まれ発展してきたのか、その歴史を我々がどのようにして残していくべきか、活発な議論が行われることを期待しています」と述べました。

基調講演では、最初に平田光司KEK名誉教授が「大学共同利用の理念と現実」と題して講演しました。東京大学原子核研究所(核研)を例に、大学共同利用の歴史的意義と発展を振り返りながら、核研での電子シンクロトロンの建設が日本の高エネルギー物理学の礎を築き、日本学術会議原子核特別委員会との関係性から共同利用の理念を検証。「研究者が単に集まるだけでなく、個々の枠を超えて新しい科学や分野を創出する民主的な組織づくりに共同利用の本質があります」と語りました。
続く基調講演では、五味田將KEK国際企画課企画調整役が「国際協力研究・共同利用研究を支えた研究支援の変遷」と題して、国際連携業務の経験から国際協力研究や共同利用研究を支えた事務組織の編成について講演しました。学術研究の推進や環境整備という大学共同利用機関の本質を踏まえつつ、事務職員やアーカイブズのあり方についての考察が提示されました。また、多様な国際業務の展開や事務職員の海外派遣を通じた人材育成の歩みにも触れ、「こうした文書を歴史資料として保存・蓄積することは、研究支援の歴史を読み解くために重要な基盤となります」と法人の枠組みを越えた連携を呼びかけました。

最後の基調講演では、小林富雄・東京大学名誉教授が「東大素粒子センターと国際共同研究」と題して、東京大学素粒子物理国際研究センター(ICEPP)とKEKの歴史的な役割分担と相補的関係について語りました。小林名誉教授は、組織の強みを活かした役割分担に支えられて発展してきたCERNのLHC実験などの大型国際共同実験について、小柴昌俊・東大特別栄誉教授が早くから東大の若手研究者らに参画を促してきたことなどに言及しました。その上で、加速器や測定器をKEKが主導する一方、ICEPPが膨大なデータ解析のためのインフラを構築するという独自の役割を見出し、双方の棲み分けと連携が生まれたことを紹介。ここから国内の各大学等へ人材を輩出する潮流も生まれ、「山田作衛氏、戸塚洋二氏、鈴木厚人氏、高崎史彦氏、そして現機構長の浅井祥仁氏など、ICEPPの第一線で活躍した研究者がさらに大きな組織で活躍するに至っています」と述べ、両組織の強固な信頼関係と人材の循環こそ、日本の素粒子物理研究が世界トップクラスの成果を上げ続けている原動力であると結びました。

2日目の発表には菅原名誉教授が発表に立ち、「戦争と平和」と題して、長年自らのテーマとしているその記録と検証の重要性を訴えました。
2日間の研究発表で、14人の発表者を含めて、初日は77人(うちオンライン33人)、2日目は65人(うちオンライン30人)が参加。質疑応答や意見交換、親睦会なども交えながら、意義ある研究発表の集いとなりました。
基調講演の他、今回の研究会の登壇者と題目は、こちらから。