アテナプログラム懇談会を開催しました

8月7日(金)、アテナプログラム・フェローのAyu, Nur Ika Pujiさん(インドネシア大学)との懇談会を行いました。今回の懇談会に、総合研究大学院大学(総研大)で研究活動を続けているNguyen Thi My Leさん(物質構造科学専攻、ベトナム国家大学)に事前に参加をお願いしたところ、快くご協力いただきました。AyuさんとLeさんは、ともに総研大で学んだ先輩・後輩の関係で、お二人とも母国の大学の教員として、後進の育成に尽力されています。そのような共通の経験を背景に、教育・研究に向かう姿勢やキャリア形成について、共感される場面が多く見られ、終始和やかな雰囲気の中で活発な意見交換が行われました。

アテナプログラム・フェロー
Ayu, Nur Ika Pujiさん
左から、Nguyen Thi My Leさん、池田仁美・加速器研究施設准教授
飯田直子・DE&I推進室・男女共同参画推進グループ長

加速器科学分野における女性研究者のキャリアについて

加速器科学や高エネルギー物理学の分野では、他の理系分野と比べて女性研究者の割合が低い状況が続いています。参加者からは、その背景として、「加速器施設で働くことは女性にとって大変」という先入観があることや、アジア地域では大型研究施設を持つ国が限られているため、研究者としての将来像を描きにくいことなどが挙げられました。

Ayuさんは、工学系の専攻に在籍していた当時、50人の学生のうち女性はわずか3人だったことを振り返りました。そのような環境の中でも、異なる国の女性研究者との交流や共同研究者との議論を通じて、多くの学びや新しい研究の着想を得ることができたと語りました。また、自身の経験を踏まえながら、「完璧なタイミングを待つのではなく、自ら行動しながら道を切り拓いていくことが大切」と目標に向かって挑戦し続けることの重要性を伝えました。

Leさんからは、加速器・高エネルギー物理学分野では、卒業後のキャリアパスが見えにくいことが女性の進出を難しくしている可能性があるとの指摘がありました。さらに、放射線を扱う研究に対する不安や健康面への懸念(女性に関する放射線量の制限は、KEKでは法令より厳しく設定しています)が、女性の進路選択に影響を与えている場合もあるとの意見が紹介されました。

女性研究者のワークライフバランスについては、一部の地域や文化圏では、女性研究者が仕事と家庭との両立に関して社会的な期待との間で葛藤する場合もあることが共有されました。Ayu さんとLeさんは、二人に共通する研究者のキャリアと結婚や子育てを両立してきた経験が、次世代の研究者にとってのロールモデルとなり得ることを確認し合いました。

高エネルギー加速器研究機構(KEK)での研究・生活環境について

KEKの研究環境については、研究活動そのものに大きな支障はなく、研究グループ内では英語で円滑にコミュニケーションを取りながら、知識や経験を共有できているとのことでした。また、研究活動において適切な配慮も受けているとの報告がありました。

一方で、生活面では女性同士で交流する機会が限られ、女性特有の悩みや相談ごとを気軽に話せる相手が少ないことが課題として挙げられました。地域やコミュニティに溶け込むためには、日本語能力の向上も重要であるとの意見が聞かれました。

母国と日本をつなぐ研究活動

Ayuさんは、現在インドネシアの大学で教員として学生指導に携わる一方、全固体電池(solid-state battery)に関する研究を進めています。日本で培った研究技術や人的ネットワークを今後の研究活動に活かしたいと考えており、今回の来訪では、インドネシアにおける研究展開や今後の共同研究の可能性について具体的な意見交換を行いました。特に、日本の研究者との連携を通じて今後取り組むべき課題や研究の方向性がより明確になったと語り、日本とインドネシアを結ぶ研究協力への期待を示しました。

Leさんは、ベトナムでは原子核物理学や素粒子物理学の分野で研究キャリアを築くことが容易ではなかったことから、材料科学へと研究分野を広げてきました。KEKでの研究活動を通じて、放射線利用技術や高エネルギー物理学に関する知識と理解を深めることができたと振り返りました。今後はベトナムに戻り、大学で研究と教育を継続する予定であり、日本とベトナムの研究機関をつなぐ架け橋として、学生交流や研究交流の促進にも貢献したいと抱負を述べました。

KEKつくばキャンパス管理棟1階 特別会議室で記念撮影

~KEKの若手支援・アテナプログラム~

KEKでは、2015年より、アジアの若手女性研究者をKEKに招へいして研究してもらう「アテナプログラム事業(海外若手女性研究者受入事業)」を実施しています。2026年度は、4名のフェローを受け入れることが決定しています。

国境を越えて活躍する女性研究者たちの研究への情熱や多様なキャリアの歩みを広く共有し、次世代の研究者が将来像を描けるよう、DE&I推進室では引き続きロールモデルの可視化と女性研究者のネットワーク形成支援に取り組んでいきます。