TYLスクール理系女子キャンプ2026を開催しました

4月2日から4月3日の1泊2日で、女子高校生のためのサイエンススクール「TYLスクール 理系女子キャンプ2026」を開催しました。このスクールは、KEK 男女共同参画推進室とToshiko Yuasa Laboratory(TYL)の共同企画として、お茶の水女子大学・奈良女子大学との共催で運営されています。 

Toshiko Yuasa Laboratory は、2006年に「日仏素粒子物理学研究所」として活動を始めた日仏連携研究所で、2010年からTYLと呼ばれるようになりました。この名前は、フランスを中心に国際的に活躍した女性物理学者 湯浅 年子(ゆあさ としこ)博士の偉業にちなんで名付けられたものです。この日仏共同事業では、共同研究のほか、科学技術分野への女性の進出を応援するための事業に取り組んでいます。 

理系女子キャンプでは、全国から応募し選ばれた30人の女子高校生が、KEKつくばキャンパスで実験やパネルディスカッション、施設見学ツアーなどへ参加します。それらを通して、進路について考え、ビッグサイエンスの現場を体験し、そこで活躍する女性研究者や技術者と交流する企画です。 

チームワークを学ぶ

開会式

スクール校長の岩瀬 広准教授とDE&I担当の道園 真一郎理事から歓迎と激励の言葉が贈られました。さらにTYL日本側代表の橋本 省二教授、長年TYL理系女子キャンプに関わる野尻 美保子DE&I推進室長がTYLネットワークの説明と国際共同実験の重要性と湯浅年子博士の功績について述べました。

岩瀬 広准教授
橋本 省二教授
道園 真一郎理事
野尻 美保子DE&I推進室長

アイスブレイク

参加者自己紹介のあと、緊張をほぐしコミュニケーションをとるためのアイスブレイク「マシュマロチャレンジ」を行いました。参加者3人とスタッフでチームになり、限られた材料でどれだけ高いタワーをつくれるかを競いました。どのチームもそれぞれ対話を重ね方針を練り試行錯誤していました。

マシュマロチャレンジの説明をする広報室 青木優美
チームの様子

放射線を学ぶ

アリスの一次元ビンゴ

放射線の大切な要素「半減期」を学ぶためのワーク「アリスの一次元ビンゴ」が今年初めて実施されました。不思議の国のアリスのハートの女王をモチーフに、ビンゴで確率について学びました。

坪山 透研究員
ビンゴカードを埋めているところ

霧箱を使った実験

その後、班に分かれて霧箱実験を行いました。霧箱とは、放射線が通過した跡を飛行機雲のように目に見えるようにする装置です。 

大型霧箱の制作に挑戦

放射線を効率よく観測するため、班でひとつ内寸約30 cmx50 cmx15 cm の大型霧箱の制作に挑戦しました。班員全員で協力して装置を組み立て、アルコールを入れた後、底面をドライアイスで冷却します。部屋を暗くしてライトを当てると、身の回りにある放射線の軌跡が見えるようになります。参加者たちは、自分たちで作った装置に放射線の軌跡が現れると歓声を上げ、目に見えない現象を実際に観察できたことに大きな驚きと感動を見せていました。 

制作手順を説明する救仁郷 拓人(くにごう たくと)特任助教
製作中の様子
霧箱の中にアルコールを入れる西脇 みちる准教授
蓋としてラップを張っている様子
霧箱を覗く参加者
霧箱の見方を教える宇佐美徳子特別教授

観察結果から半減期を計算する

実験の後半では、製作した大型霧箱を用いて原子核の半減期の測定に挑戦しました。ピストンで、気体であるラドンを霧箱の中に注入すると、V字に見える飛跡があります。このV字の飛跡は、ラドン-220がアルファ崩壊してポロニウム-216となり、すぐに再びアルファ崩壊することで生じます。この時間差、すなわちポロニウム-216の生存時間を記録しその半減期を求めました。多くの参加者にとって初めて触れる内容でしたが、アリスの1次元ビンゴが理解の助けになったようです。 

霧箱にラドンを入れている様子
動画に映ったV字の飛跡
ストップウォッチと霧箱の飛跡を動画に撮っている様子
解析の質問に答える岩瀬准教授

教えて先輩!理系な女子会@KEK

夕食を挟んで、物理学や数学を研究している女子大学院生・研究者とのパネルディスカッションを行いました。まず、6人の理系女子の先輩たちがそれぞれ簡単に自己紹介を行いました。研究内容、これまでの経歴、高校生のときに頑張っていたことなど多彩な話題が紹介され、参加者は熱心に耳を傾けていました。続いて、少人数のグループに分かれ、先輩たちに気軽に質問しながら交流する時間を設けました。なぜ理系に進んだのか、進路を考える上で大切にしたことなど、さまざまな質問をし、先輩たちも率直な意見を答えていました。 

自己紹介の様子
KEK物質構造科学研究所 梅垣いづみ助教
KEK加速器研究施設 團 優菜技術員
お茶の水女子大学大学院人間文化創生科学研究科 人見 はるかさん
東京科学大学理学院物理学系 竹村 珠希さん
総合研究大学院大学・KEK加速器研究施設 渡辺 瑠合さん
名古屋大学大学院理学研究科 水口 由莉乃さん

女性研究者から理系への招待状

2日目の午前中は、第一線で活躍する女性研究者による講義が行われました。京都大学理学研究科の桂川 美穂助教、フランス原子力・代替エネルギー庁 (Commissariat à l’Energie Atomique, CEA )のJulie Malcles主任研究員、京都大学理学研究科の谷 茉莉准教授の3名が、それぞれの研究内容やこれまでの歩み、キャリアについてそれぞれ1時間ほど語りました。参加者は真剣な表情でメモを取りながら耳を傾けていました。講義後の質疑応答では、研究の根幹に迫るような深く活発なやり取りが行われました。 

京都大学理学研究科 桂川 美穂助教
CEA Julie Malcles主任研究員
京都大学理学研究科 谷 茉莉准教授
谷准教授の実演の様子

加速器体験ツアー

2日目の午後には2班に分かれてバスに乗り、KEKつくばキャンパス内の実験施設の見学を行いました。見学した施設は、日本最大の加速器SuperKEKBの衝突点にある「Belle II測定器」、放射光実験施設「フォトンファクトリー」です。 

それぞれの実験施設で研究者が研究内容や実験の方法、実験に使われる装置の説明などを行いました。 

Belle II測定器の見学の様子
測定器の調整やデータのチェックを行うコントロールルーム
SuperKEKBの電磁石について説明する飯田 直子シニアフェロー / DE&I推進室男女共同参画グループ長
Belle II測定器の検出器について説明する足立 一郎教授
展示室を案内する池田 仁美准教授
フォトンファクトリーの加速器について説明するTanaka Olga助教
加速器の電磁石について説明する本田 融特別教授
軟X線を使った分析の説明をする阪田 薫穂(さかた かおるほ)准教授
硬X線 を利用した食品分析の実験について説明する大下 宏美特別助教
実験機器を前に説明する大下特別助教

プログラムを終えて

見学の後に全員が集合して閉校式が行われ、一人一人が修了証書を受け取りました。

修了証を授与する橋本教授

プログラム終了後も、打ち解けた参加者同士で名残惜しそうに語り合う姿が見られました。このスクールでの学びや体験、そして新たに生まれた仲間とのつながりが、これから先の歩みの支えとなることを願っています。 

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