欧州合同原子核研究機関(CERN)のマーク・トムソン新所長が2月16日、KEKを訪問しました。KEKとCERNとの協力は、CERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)計画に日本が正式参加をした1990年代から本格化し、ATLAS 実験やLHCのアップグレードなど共同研究開発を行っています。今年1月にCERN所長に着任したばかりのトムソン氏の来日は、着任以降、欧州以外では初の海外訪問となり、加速器科学の国際拠点である両者の緊密な協力関係を象徴するイベントとなりました。

トムソン氏は浅井祥仁KEK機構長と花垣和則理事の案内で、Belle II測定器や応用超伝導加速器イノベーションセンター(iCASA)の各施設、量子場計測システム国際拠点(WPI-QUP)や、超伝導低温工学センターにおける超伝導マグネットなどつくばキャンパスの施設を視察しました。昼食を交えながら、齊藤直人 素粒子原子核研究所長、小関忠 加速器研究施設長、小林隆 J-PARCセンター長、東俊行 QUP拠点長からそれぞれの取り組みと今後の両機関の協力可能性について意見交換がなされました。

続いてトムソン氏は、”Particle Physics and CERN: Today and Tomorrow”と題し、小林ホールで講演しました。LHCで発見されたヒッグス粒子の科学的重要性について語りながら、特にこれからの宇宙の根源的性質の探究におけるCERNの役割に焦点を当て「素粒子物理学にとって今は刺激的で極めて重要な時期。今後数年間に下される決定は、この分野の長期的な未来を形作ることになるだろう」と話しました。

トムソン氏は、翌17日に文部科学省で、浅井機構長、花垣理事らとともに松本洋平大臣を表敬訪問しました。松本大臣からは所長就任の御祝いの挨拶があり、KEKと東京大学が主導するハイパーカミオカンデ計画へのCERNの協力について謝意が示されました。トムソン氏はLHC計画、および現行のLHC加速器高輝度アップグレード化計画(HL-LHC)における日本の貢献について深い感謝と、今後の研究計画に言及しながら、「CERNと日本が双方とも恩恵を受けられるような仕組みづくりを模索したい」と話しました。
KEKとCERNの間では、HL-LHC計画やATLAS実験等の国際共同実験、次世代の加速器開発に係る研究開発などさまざまなプロジェクトが進んでいます。CERNとの連携がこれまで以上に深まることが期待されます。