サイエンスキャスティング2025の一環として中高生がKEKで実験しました 

中高生がそれぞれの選んだ研究テーマでつくば市内の研究機関や一般企業を訪れ、調査研究を行い発表する「つくばサイエンスキャスティング2025(主催:サイエンスキャスティング実行委員会)」が、8月5日から6日にかけて開催されました。 

参加者は「気象予測の最先端を知る-雷雨、線状降水帯、地球温暖化-(気象研究所)」「宇宙から見た地球:電子の眼リモートセンシング(産業技術総合研究所)」など9つのテーマから1つを選び、学年や学校の異なるメンバーで構成された14チームに分かれて調査研究を行いました。 

KEKつくばキャンパスには3名の中高生が訪れ、「霧箱で宇宙線のエネルギーを測ろう!」というテーマで見学と実習を行いました。 

KEKの概要説明を受けたあと、日本最大、世界最高の衝突性能を持つ衝突型加速器「SuperKEKB」の衝突点に設置されたBelle II測定器を見学。巨大な装置がどのように粒子の衝突を観測しているのかを学びました。研究者の説明を、熱心にメモをとりながら聞いてくれました。 

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桂不動産KEKコミュニケーションプラザで概要説明を受ける様子
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Belle II測定器を見学する様子

続いて、つくば科学教育マイスターの広報室 青木優美が講師となり、霧箱実験を行いました。実験では実際に空から降り注いでいる宇宙線を目で確認しました。霧箱は、アルコールの蒸気の中に宇宙線が通ると、飛行機雲のような筋が一瞬だけ現れる仕組みになっています。生徒たちは、次々と現れては消える宇宙線の軌跡を探し、観察に夢中になっていました。

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霧箱で宇宙線を観察する様子 

さらに、霧箱に磁石を近づけると、宇宙線の通った筋が少し曲がります。その曲がり具合から、宇宙線がどれくらいの勢い(運動量)で飛んでいるのかを計算しました。身近な装置を使って、目には見えない粒子の性質を調べられることに、生徒たちは驚きを感じていました。 

巨大なBelle II測定器と小さな霧箱――スケールは違いますが、どちらも「見えない粒子をとらえる」という目的は同じです。最先端の国際共同実験と、自分の手で行う実習をつなげて体験することで、粒子物理の世界をより身近に感じられたのではないかと思います。 

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宇宙線の飛跡を動画に収める様子

調査研究の翌日、参加者はつくば国際会議場に集まり、研究所の概要や実験内容を9分間で紹介しました。最後に全員に修了証が手渡され、プログラムは終了となりました。 

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発表の様子

見学や実習を通して、最先端研究の現場に直接触れた経験は、生徒たちにとって科学の面白さや学びの広がりを実感する大きな機会となったはずです。KEKでは今後も、このような活動を通じて中高生が科学に親しみ、未来を担う人材へと成長していくことを後押ししていきます。 

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