キプロスで国際シンポジウムを開催しました

文理を超えた学際共同研究の推進に向けて

11月25日~27日、国際シンポジウム「Cyprus Meets Japan(キプロスと日本の出会い)」が、KEKとキプロス研究所の共催により、キプロス共和国の首都ニコシアにあるキプロス研究所で開催されました。同研究所は、キプロス研究教育財団が運営する、埋蔵文化財科学や環境・エネルギー科学などの研究センターと大学院教育システムを持つ研究教育機関で、分野横断的な研究と国際協力に重点を置いています。

集合写真、浅井機構長とKEKからの参加者とキプロスの参加者
シンポジウム参加者

文理融合の研究ワークショップを開催

今回のメインセッションは、2日目に開かれた『New Science & Technology in Archaeology and Culture – International Workshop on Non-destructive Analysis in Cultural Heritage(考古学と文化研究における新たな科学技術 – 文化財の非破壊分析に関する国際ワークショップ) 』と題した異分野融合型の研究ワークショップでした。これはKEK物質構造科学研究所 ミュオン科学研究系が中心となり、国内外の研究者に呼びかけて実現したものです。

日本とキプロスのみならず、ヨーロッパ・中東などから大学・研究機関・博物館の研究者が参加し、放射光を用いた元素分析イメージング、中性子・ミュオンを利用した刀剣の研究、負ミュオンを用いた小判・金貨などの非破壊分析の方法やその成果について発表しました。出席者はまた、新たな共同研究の可能性を探るべく、積極的に意見を交わしていました。セッション後には、キプロス研究所の研究施設の見学も行われました。

ワークショップのオーガナイザーが研究発表に聞き入っている写真
研究発表に耳を傾けるワークショップのオーガナイザー。前列左より、キルシ・ローレンツ博士(キプロス研究所)、小杉信博 特任教授(大阪大学/前KEK 物質構造科学研究所長)、下村浩一郎 教授(KEK 物質構造科学研究所 ミュオン科学研究系 主幹)
ワークショップ発表者が研究発表を行っている写真
負ミュオンを用いたローマ帝国時代の金貨の分析について発表するイギリスからの研究者
キプロスの研究施設面額ツアーに参加するメンバーの写真
キプロス研究所の研究施設の見学ツアー

大学共同利用研究教育アライアンス(IU-REAL)のミニシンポジウム

また初日には、「大学共同利用研究教育アライアンス(IU-REAL)」を構成する機関の研究教育活動を紹介するミニシンポジウムも行われました。IU-REALは、KEKなど四つの大学共同利用機関法人と総合研究大学院大学が設立した組織で、国際頭脳循環の拠点として新たな学際的科学の創造に貢献することを目的としています。IU-REALの各機関で行われている研究の分野は実に幅広く、物理や天文、生命などの科学研究から、歴史や文学、文化の研究まで多岐にわたります。各機関から参加した研究者が文理の垣根を越えてそれぞれの研究活動を発表し、キプロス研究所側も四つのセンターで行われている多彩な研究について紹介するなど、貴重な交流の機会となりました。

1日目の終わりには、KEKの浅井祥仁 機構長が素粒子物理と宇宙の起源をテーマにキプロスの市民に向けた公開講演を行い、聴講者からは多数の質問が寄せられていました。

今回のシンポジウムでは、併せて、IU-REALに参画する機関の事務系職員向けに、海外実務研修も行われました。研修生は、発表資料の準備や当日の運営など国際会議の実務を体験しました。

シンポジウムには全体で50人を超す参加者があり、IU-REALに参画する機関の研究・教育活動の国際的な認知度向上や学際共同研究の推進につながる発展的なイベントとなりました。

講演をする浅井機構長の写真
浅井機構長の講演。キプロスの聴講者は不思議な宇宙の世界に引き込まれた
キプロス研究s所職員と会議の受付業務を共同で行うIU-REAL研修生の写真
キプロス研究所職員とともに会議の受付業務を行うIU-REAL海外実務研修の研修生

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