KEKの小林 誠 特別栄誉教授は、8月に茨城県立つくばサイエンス高等学校の名誉校長に委嘱されました。小林博士が名誉校長として関わることで、次世代の科学技術の担い手として、未来を切り開く人財を育成する学校の魅力づくりや教育内容の充実を図ることが目的です。
就任時、小林博士は「少しでも地元のお役に立てばという気持ちでお引き受けしました。生徒の皆さんには、恵まれた環境を活かして、自らの力を伸ばしていただきたいと思います。」と語りました。
小林名誉校長の特別授業
11月27日に、名誉校長として初めての特別授業が行われました。会場はつくばサイエンス高等学校の体育館です。全校生徒が参加し、「反粒子と宇宙」と題して講演が行われました。この特別授業に先駆けて、1年生は物理の授業で素粒子物理学についての事前学習を行ったそうです。
1973年、小林博士は、後に「小林・益川理論」と呼ばれる素粒子物理学の粒子と反粒子に関する論文を発表しました。1999年、その理論を実験で実証するため、日本と米国でそれぞれ加速器を使った実験が始まりました。日本の実験の舞台となったのが、KEKのBファクトリー(KEKB加速器とBelle測定器)です。2001年には、小林・益川理論が実験で実証され、2008年の小林博士と益川 敏英博士のノーベル物理学賞受賞につながりました。
話を聞いた高校生2年生から、「授業で自分の研究がうまくいかないことがあります。研究を続けてきた心持ちを教えてください」という質問がありました。小林名誉校長は「研究がうまく進むのはまれで、順調に進まないのが普通です。乗り越えるハードルの高さが分からないのが研究の難しいところ。今は休む、違うことをやってみるということも必要です」とアドバイスしました。
また、「宇宙のどこかに反粒子でできた星がある可能性はありますか」という問いに対しては、「今のところは観測できる範囲にはないという回答になります」と答えました。
KEKの実験施設を見学
12月2日には、つくばサイエンス高等学校の1年生全クラスがKEKを訪れました。
常設展示施設KEKコミュニケーションプラザを見学した後、バスに乗って実験施設に向かいました。Belle測定器の後継機であるBelle II測定器がある筑波実験棟とその展示室、放射光実験施設「フォトンファクトリー」を見学し、それぞれの施設で研究者の説明を受けました。