KEK一般公開2024を開催しました                     

4000人以上が来場!

「フォトンファクトリー」で顕微鏡をのぞき込む子供たち。

高エネルギー加速器研究機構では“広く一般にKEKの研究活動に対する理解と科学技術に対する関心を深めてもらい、科学技術に親しむ機会を提供する”ことを目的として一般公開を毎年開催しています。通常ではなかなか立ち入れない実験施設や、研究者による工夫を凝らした研究展示などを自由に見ることができる、年に一度の機会となっています。

9月7日(土)、「KEK一般公開2024」を開催しました。イベント当日は天候に恵まれ、4200人もの方々にKEKの研究現場を見ていただくことができました。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。

会場の雰囲気を感じていただけるよう、一般公開の様子を一部紹介します。

KEK一般公開2024のポスターです。

  • 一般公開で活躍した乗り物
事前の準備では完全に電気の力で動く
珍しい乗り物が登場しました。
展示用パネル運搬の様子です。
一般公開当日は無料のバスが構内を
循環し、来場者の足になりました。
研究本館前バス停の様子です。

公開施設

今年度はこれまでで最多の16の実験施設・展示施設を公開。PF-AR南実験棟の測定器開発テストビームラインを初公開しました。また、KEK一般公開2024のメインビジュアル「コッククロフト・ウォルトン型加速器」では特別なライトアップが行われました。

コッククロフト・ウォルトン型加速器

半世紀以上前からKEKにあるレトロ加速器です。
多摩美術大学の森脇裕之先生監修の特別なライトアップが
行われ実験ホールが幻想的な雰囲気に包まれました。

電子陽電子入射器

5つのリング型加速器にビームを供給する直線型加速器が見渡せます。どこまでも続く装置にくぎ付けになる見学者も多くいました。  

フォトンファクトリー実験ホール

放射光を用いた実験ができる施設です。展示・企画が多く大変混み合っていました。2階の渡り廊下から実験ホールが見渡せます。

フォトンファクトリー光源加速器

放射光を発生させる加速器です。普段は入ることができない、分厚いコンクリートで外から隔絶されている空間を探検しました。

測定器開発テストビームライン

素粒子の振る舞いを見るために、世界で一つだけの測定器を開発しています。初公開ということもあり多くの見学者が訪れました。

ERL開発棟

エネルギー回収型という新しい加速方式の試験を行う施設です。順路の関係で加速器の下をくぐるという珍しい体験もできました。

空洞製造技術開発施設CFF

CFFでは加速器に欠かせない超伝導加速空洞の開発を行っています。施設内はクリーンルームのため靴を履き替えて見学をしました。

超伝導リニアック試験施設棟STF

STFでは超伝導加速器に関連した研究・開発を行っています。地下トンネルではILC計画に向けて実験を進める超伝導線形加速器を公開しました。
 

先端加速器試験棟ATF

世界最小ビームの開発研究を行う試験加速器を見ることができます。施設内にはとても狭い場所があり頭をかがめて先に進みました。

SuperKEKB加速器

世界最高の衝突性能を誇るKEKの代名詞ともいえる加速器です。周長3キロメートル(日本最大)の加速器トンネルの一部を実際に歩くことができました。

Bファクトリー筑波実験棟

工事中のため、BelleⅡ測定器の見学はできませんでしたが、展示室で測定器の模型や実際に使われているセンサー、加速空洞、磁石を公開しました。

放射線科学センター

KEKの放射線安全を担う施設です。身の回りの放射線について楽しく学ぶ展示を行いました。⼦どもたちはサーベイメーターを使った宝さがしゲームに夢中になりました。

機械工学センター

機械工学センターでは、加速器の「材料」と加速器と関係が深い「真空」をテーマに展示を行いました。こちらは材料の熱の伝わりやすさについて解説している様子です。

超伝導低温工学センター

加速器に欠かせない超伝導技術の研究開発を行う施設です。超伝導の力によって「浮いてくっつく」超伝導コースターの実演は今年も大人気でした。

計算科学センター

計算科学センターでは、パネル展示をメインに、KEKの研究活動を支える計算機システムやネットワークなどについて紹介しました。

KEKコミュニケーションプラザ

コミュニケーションプラザでは体験型展示などを通してKEKの研究内容を分かりやすく説明しています。史料室による特別展示も行われ、賑わいを見せていました。

トーク企画

研究者や学生によるトークイベントを4つの会場で行いました。どの回も満席で大変好評でした。

KEKの歩き方~KEKは加速器で何をしているの?  

花垣 和則 理事によるKEK初心者向けトーク企画「KEKの歩き方」は、早朝の企画でしたが多くの来場者が参加しました。

宇宙の始まりの「非常識」 ~唯物論から唯空論へ~

浅井 祥仁(あさい しょうじ) 機構長が宇宙の始まりについての最新研究を解説。難しいテーマについてユーモアを交えつつ、分かりやすく語りました。

(DE&I企画)フリートーク「博士の夢と生活」

研究者のワークライフバランスをテーマにフリートークを行いました。登壇者と話ができる交流会も開催され盛り上がりを見せました。

J-PARCサイエンスカフェ

KEK東海キャンパスの研究者がJ-PARCの胸躍る研究や加速器を紹介。加速器とチョコレートの意外な関係についても解説しました。

目で見る物理~加速器ってどんなもの?~

加速器を手で表すとしたら?をテーマに行われた「目で見る物理」では、筑波技術大学生の髙橋理子さん(写真右端)が登壇。参加型のワークショップを行いました。

日本の陽子線治療のあけぼの(史料室)

筑波大学の榮武二教授が陽子加速器とがん治療について解説。ミニ企画でしたが、これを目的に来たという来場者もいました。
筑波技術大学生 髙橋理子さんからのコメント・当日いただいた質問への回答

初めてKEKさんとご一緒して「手話」と「物理(加速器)」がコラボしたかなり珍しいテーマで発表をさせていただきました。 筑波技術大学から高エネルギー加速器研究機構までバスでおよそ15分ほどの距離であるにも関わらず、今まで足を踏み入れた経験がありませんでした。リハーサルの時に初めて訪れた時、想像以上に敷地が広く驚きました。なぜこのような場所を私は知らなかったのだろうかとつくば在住3年目にして反省しました。 私個人としては手話に関する発表経験は何度かありましたが、手話と物理を重ね合わせた内容というものは全く想像したことがなかったため、まずはKEKさんの発表内容である「加速器」について勉強するところからスタートしました。 そこからリハーサルを通して直前まで変更や追加事項などでバタバタしていましたが、事前打ち合わせのおかげで無事に本番を迎えることができました。 当日は多くの方にお越しいただき、聴者に向けての講演がメインだったためどうやったら伝わるかと考えながら話していたので、手話通訳が付いているのにも関わらずアドリブで急に話し出してしまうこともありました。最後は参加者の皆様に「楽しかった」「わかりやすかった」などの感想をいただき、とても喜びを感じると同時に安心感も得られました。 たった一度だけの説明で理解してくれる聴者は少ないと思いますが、KEKさんのコラボをきっかけに加速器に関する興味、手話に関する興味が湧いてくれる人が1人でもいてくれたらと願っています。

質問:手話が学校で禁止されていた時期も、使われていたのですよね?例えばテレビニュースの手話はいつから始まったのでしょうか?
回答:一番最初はNHKになります。1990年4月からスタートしています。
手話を禁止されていた時、公の場で手話を使うことは誰もしませんでした。周りからの目があるからです。家の中だけ、親しい友達だけなどでこっそり手話をやることはよくありました。

質問:世界共通の手話について、「ある」が正解のと事ですが、「言語として認められていない」のであれば、まだ現時点では「ない」が正解になるのではないでしょうか?
回答:国際手話は言語として認められていません。国際手話は世界中のろう・難聴者が国際交流をする際に用いられる手話であり、簡単に言えば、世界中の色んな手話言語を取り入れて作られたものといっていいでしょう。

質問:手話では口元の表情が重要だと説明がありましたが、マスクをしていると手話会話できなくなるのでしょうか?
回答:マスクがあっても会話は可能です。しかし、ろう・難聴者がコミュニケーションを取るときは自然と気づいたらマスク外して会話してる…っていう感じです。表情が見えないので、マスクはない方がありがたいです。

ブース展示・体験コーナー

1日では回りきれないほど多くのブース展示や体験コーナーがありました。

ポケット分光器をつくろう!

フォトンファクトリーで行われたポケット分光器の工作教室は今年も大人から子供まで大人気でした!

きらきらぴかぴかのふしぎ

KEKと広報連携協定を結んでいる多摩六都科学館のブースでは、素粒子の検出に欠かせないシンチレーターなど、光が当たると電子の働きにより反射や発光するものの展示が行われました。

SuperKEKBブレスレットを作ろう! 加速キッチン

SuperKEKB加速器をイメージしたビーズブレスレットの工作教室が初出展!ブレスレットを作りながら加速器について学びました。

理論センターのコーナー

理論センターのコーナーでは難しい理論をクイズも交えつつ分かりやすく紹介しました。参加者はポスター展示とにらめっこしながらクイズに挑戦していました。

冷やしミューオン加速器と超冷やし中性子はじめました

J-PARC関連の展示も多数。普段は東海キャンパスで活躍する研究者の解説を聴くこともできました。

ゲームラリー「素粒子をさがそう!」  

つくばキャンパスに散らばった素粒子キャラクターをさがしました。参加した皆さんは、いくつ見つけることができましたか?

共通基盤研究施設「謎解き」に挑戦!

共通基盤4センターを巡り、歯ごたえのある謎に挑戦しました。問題は全てKEKの職員が考えました!

理系女子ミニツアー

理系を目指す女子中高生を対象に、KEKの研究現場を見学するミニツアーを行いました。ツアー終了後には女性研究者・エンジニアとの交流会もあり、理系女子の進路について考えました。

SuperKEKB加速器の見学では、女性研究者が解説をしました。   
見学ツアーで見た加速器をブレスレットで再現しました。

来場者からの感想

ご来場いただいた方に、イベントの感想をアンケートで聞いてみました。

・中高生のツアーに参加させていただきました。身近にあまり素粒子の話ができる友達がいないので今回のツアーで友達ができて嬉しかったです!
(神奈川県 10代)

・研究者の皆さんがとても熱意をもって話してくださったので、大変刺激を受けました。
(20代 男性)

・普段見ることができない場所なので、大変興奮しました。次回は教え子たちを連れて来たいです。
(東京都 30代 男性元教員)

・コッククロフト・ウォルトン型加速器のライトアップが印象に残りました。科学と芸術のコラボレーションがもっと進んでこんな企画が増えると嬉しいと思います。
(東京都 40代 女性)

今回の一般公開も盛りだくさんの内容で来場者をお迎えし、大盛況のうちに終了しました。KEKは、2025年度も一般公開の開催を予定しています。

今回参加できなかった方も、来年の4月には「KEK春のキャンパス公開」の開催を予定していますので、ぜひ次の機会にKEKにお越しください!

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