初の野外イベント、おとなのサイエンスカフェ第7夜「宇宙の謎に迫るすごい実験」を開催しました

7月5日、おとなのサイエンスカフェ第7夜 野外編「宇宙の謎に迫るすごい実験」をつくばセンター広場フォーラムで開催しました。

今回は、KEK素粒子原子核研究所とつくばまちなかデザイン株式会社の共催で実施しました。また、日本テレビ公式宇宙情報チャンネル「ソラテレ 夢宙人放送局」、量子場計測システム国際拠点(WPI-QUP,KEK)、KEK物質構造科学研究所の協力により、通常のおとなのサイエンスカフェを拡大し、盛りだくさんのプログラムでお届けしました。初めての野外イベントとして開催し、会場では約85名の参加者が夏の夜を満喫しながら、極微なサイエンスの話に耳を傾けていました。

最初に、浅井 祥仁(あさい しょうじ)KEK機構長があいさつし、素粒子実験の楽しさやKEKで行っている研究について紹介しました。宇宙がどのように誕生し、今の宇宙が形成されたのか解説し、実際の実験データを見せながら素粒子実験の醍醐味(だいごみ)について参加者に語りました。

参加者に語りかける浅井機構長

続いて、宇宙にまつわるクイズ「どっちがホント?」では、KEK物質構造科学研究所(物構研)・大東 琢治(おおひがし たくじ)准教授、量子場計測システム国際拠点WPI-QUP・早川 亮大(はやかわ りょうた)研究員と総合研究大学院大学・長谷川 聡美(はせがわ さとみ)さんがクイズの解説者として登場しました。タレントのきくりんさんが進行役となってクイズを出題し、会場の参加者は挙手でクイズに参加。KEKつくばキャンパスにある、フォトンファクトリーや、はやぶさ2が持ち帰った試料にまつわるエピソードを大東准教授が紹介するほか、QUPではどのような研究が行われているか、早川研究員が解説しました。参加者に配布したKEKオリジナルクロスワードの一部はこれらのクイズの中に答えが隠されています。多くの参加者がクロスワードに解答し、KEKオリジナルグッズを手にしていました。

会場全体とクイズの様子

その後、素粒子原子核研究所の多田 将(ただ しょう)准教授が「宇宙の謎に迫るすごい実験」と題し、宇宙の謎を解く鍵となるニュートリノ実験についてお話しました。茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCで行われているT2K実験(長基線ニュートリノ振動実験)は、J-PARCのニュートリノ実験施設で発生させたニュートリノビームを岐阜県神岡町に向かって発射し、スーパーカミオカンデで観測する実験です。この実験では、3種類あるニュートリノが神岡町に到達する間に互いに入れ替わる「ニュートリノ振動」を調べています。

多田准教授は、J-PARCの静止標的型陽子加速器がいかに世界最強であるかを紹介し、日本が世界最高の加速器技術を持ち、特にニュートリノ物理学において世界をリードしていると語りました。さらに、「ニュートリノ振動」について詳しく解説し、宇宙誕生時には物質と反物質は同じだけ存在していたにも関わらず、現在の宇宙には物質しか存在しないという謎についても説明しました。そして、この謎の解明にニュートリノが重要な役割を果たすと指摘しました。最後に、T2K実験では世界で行われている他の実験としのぎを削る競争をしながら、物理学最大の謎である消えた反物質の謎に迫っていると述べ、トークを締めくくりました。

多田准教授のトーク

最後に、日本テレビ公式宇宙情報チャンネル「ソラテレ 夢宙人放送局」とのコラボ企画、「“おとなが今さら聞きづらい”SF談義」を行いました。きくりんさんが聞き役となり、「アニメや漫画のあり得ない技は実現できるのか」「映画で見かけたシチュエーション~素粒子物理学者はどう対処する?」「そうなの?現実に活用済みの素粒子物理学」というテーマで浅井機構長と多田准教授に質問を投げかけました。生配信の視聴者や会場からの質問にも答え、和やかな雰囲気の中、プログラムは無事に終了しました。

すべてのプログラムが終了する頃には辺りは真っ暗でした

全てのプログラムは、こちらのリンクからアーカイブを視聴できます。

ソラテレ – 夢宙人放送局【宇宙のあらゆる情報】
https://www.youtube.com/watch?v=9NbgiL-B-yY


おとなのサイエンスカフェは金曜日の夜、大人の特権である美味しいお酒やおつまみを楽しみながら、極微なサイエンスの話を楽しんでもらうことを趣旨に企画したもので、シリーズで開催しています。

次回は、8月9日(金)に行います。

おとなのサイエンスカフェ第8夜「宇宙でつくられた大量の金の秘密とまだ見ぬ『安定の島』」

地球には「金や白金が異常に多い」と聞くと驚くかもしれません。鉄に比べると白金は六十万倍も少ないですが、タングステンの何十倍も多いです。この元素の存在比のばらつきは、宇宙で元素が作られた仕組みによります。しかし、その実態はよく分かっておらず、観測・理論・実験の分野からこの謎の解明に挑んでいます。今回は、和田教授が、元素の起源や最新の研究成果、そして「安定の島」と呼ばれる未知の領域について解説します。

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