KEK広報誌「KEK Stories」を創刊しました

十代の読者に向けてKEKの活動を紹介

これから進路を決める十代が手に取ってくれる冊子を目指した、ビジュアル重視の広報誌です。KEKの活動を親しみやすく紹介し、KEKと基礎科学に興味を持ってもらうことを目標にしています。

映画のパンフレットをイメージし、また持ち帰りやすさを考え、従来の刊行物よりも小さめのB5サイズで横開きとしました。

なぜいま紙媒体?

KEKには長い間広報誌がありませんでした。オンライン化が進む現代になぜ紙媒体を創刊? と思われる方もいらっしゃるでしょう。

きっかけは所内からの「KEKを紹介するために、手渡しできる冊子がほしい」という要望でした。また、「どうしてKEKには広報誌がないの?」という声もありました。

紙媒体は作るまでに時間がかかりニュース性は失われます。そこで、速報性はウェブ記事に任せ、時間が経っても色あせない情報を載せ、紙ならではの良さを追究することにしました。広報の目的は何か、というところから考え始めて、その目的を達するために、置いてあったら思わず手に取りたくなるような、開いてみたくなるような冊子にしようと模索が始まったのです。そしてできあがったのが『KEK Stories』です。

KEK Stories とは

この広報誌名は、KEK関係者を対象とした公募により選ばれたものです。

KEKは多彩な加速器(粒子を加速するための大型装置)を軸に、多様な研究活動が展開される研究所です。そこで、これをシネマコンプレックスに例え、研究活動(Story)を映画に見立てた特集記事として一号で一つずつ紹介していこうと考えました。映画のパンフレットをイメージし、表紙には特集タイトル(創刊号では「6羽の鳥はなんと鳴く」)があたかも映画のタイトルのように大きく書かれています。

また、特集ページとは別に連載ページを設けました。連載ページには特集に関連した加速器の話題や専門用語、登場する研究者が好んだ食べ物などが載り、裏表紙を大型装置のクールな写真が飾ります。

これらのページ構成は、KEKの広報に関わる研究者および広報担当者からなるKEK広報誌編集委員会が、大学の広報誌などを多く手掛けるアドバイザーとデザイナーの協力を得て、何度も話し合いを重ねて練り上げたものです。

今後も一号一号丹念にページ作りを続け、広報誌を並べてみることでKEK全体が見渡せるようなシリーズを目指します。そしていまKEKを知らない方にも親しみをもってもらうきっかけになればと考えています。

創刊号「6羽の鳥はなんと鳴く」について

創刊号の特集は、確立してから半世紀を迎えたことを記念して、素粒子物理学の「小林・益川理論」を取り上げました。小林・益川理論を実証するためにKEKで行われたBファクトリー実験、そしてこれからの素粒子物理学まで、時間を追ってご紹介しています。

表紙と特集ページのイラストは、百貨店のイメージ画や書籍の表紙を手がけるイラストレーター髙橋あゆみさんが担当しています。鳥のモチーフは何を表しているか、何羽いるかなど、謎解きのようにお楽しみください。また、連載ページでも編集委員の得意分野を生かし、イラストを多用、手書きの筆文字も取り入れました。

関連した加速器をご紹介する連載「知られざる加速器の世界」では、Bファクトリー実験に使われた「クラブ空洞」を取り上げました。この空洞の実物の一つは現在、国立科学博物館(地球館地下3階)のBファクトリー実験のコーナーに展示されています。ご興味を持たれた方はぜひ実物を見にお出かけください。

クラブ空洞(奥にはノーベル賞のコーナーがある)
(国立科学博物館にて2024年3月撮影)
Bファクトリー実験のコーナー
(国立科学博物館にて2024年3月撮影)