「弦と管と鍵盤のアンサンブル」開催報告~KEKコンサートと出演者との縁について~

1月26日、KEKつくばキャンバスにおいて第66回KEKコンサートを開催しました。このコンサートは、音楽愛好家で『超対称性理論とは何か』 (講談社ブルーバックス)などの著書がある物理学者の小林富雄・東京大学名誉教授がKEK在籍中の2020年3月に開催を予定していたものです。4年ぶりのコンサートとあって、200名を超える多くの来場者がありました。

小林さんは、研究の傍ら長年にわたりプロのクラリネット奏者に師事し、2016年からは東京都内でさまざまな楽器のアンサンブルを中心としたコンサート「音楽の夕べ」を定期的に主催しています。

今回のタイトルの「弦と管と鍵盤のアンサンブル」の「弦」はチェロ、「管」はクラリネット、「鍵盤」はピアノを表しています。この日はバッハ、ショパン、ハイドン、シューマン、ブラームス、最後のアンコールはベートーべンといったクラシック界の大御所によるオーソドックスな曲が中心でした。その合間にタンゴ音楽の奇才アストル・ピアソラの「ル・グラン・タンゴ」を入れるなど、硬軟取り混ぜた演奏を披露しました。

司会進行を務める小林さん

司会進行は小林さんが自ら行い、チェロを担当した和田 理(わだ おさむ)さん、ピアノを担当した實川 飛鳥(じつかわ あすか)さんと知り合ったいきさつについても紹介してくれました。

和田さんは桐朋学園大学卒業。現在は山中湖村在住の世界的チェリスト、ナサニエル・ローゼン氏の元で研鑽を積みながら、室内楽やオーケストラの演奏活動を行っています。小林さんとの出会いは、ある弦楽器製作工房です。

演奏中の和田さん

この工房は、小林さんの東京工業大学時代の友人である飯田 裕さん(故人)が大学在学中に弦楽器製作者を志して進路を変更し、イタリアでの修業を経て長野県に立ち上げました。現在は山梨県内にあります。共演者を探していた小林さんが飯田さんから紹介を受けたのが和田さんでした。

和田さんの経歴を紹介する小林さん

一方、實川さんは東京藝術大学大学院を経て、グラーツ国立音楽大学(オーストリア)修士課程を最高点にて修了。これまで国内外で数々の賞を受賞し、現在はウィーン在住。小林さんと同郷の千葉県旭市出身です。實川さんは小林さんとはまずクラリネット奏者として知り合い、同じ地元の物理学者だと後から知った時は驚いたそうです。

小林さんとの出会いについて話す實川さん

小林さんと飯田さん、和田さん、實川さんの出会いがきっかけで実現した今回のコンサート。ソロ、デュオ、トリオとスタイルを変えて演奏を披露しましたが、曲の間にも旧知の仲らしい息の合ったやり取りが見られ、人と人との縁を深く味わうことができた夜のひとときでした。

コンサート終了後の3名