筑波会議2023においてKEKがセッションを主催

9月26日から28日までの3日間、つくば国際会議場で、「筑波会議2023」が開催されました。この会議は、筑波研究学園都市に世界から産学官の優秀な若手を中心とする人材が集まり、「社会と科学技術」の諸課題について議論し、ネットワークを形成する国際会議です。若手版「ダボス会議」を目指しており、2019年から隔年で実施されています。3回目となる今回は、4年ぶりに対面開催が復活しました。

今年のテーマは、“Design The Future – Curiosity-driven Quests for Global Solutions”。KEKでは、持続可能な発展のための国際基礎科学年2022-2023(International Year of Basic Sciences for Sustainable Development 2022-2023)にちなんで、「Basic Science for SDGs, Perspectives from Global South: SDG12; Responsible Production and Consumption(SDGsのための基礎科学、グローバルサウスからの視点:SDG12;責任ある生産と消費)」と題したセッションを企画しました。

マリアン・アサントワ・ンカンサ准教授(右下)

セッションの前半では、KEKの足立伸一理事がまず開会挨拶と主旨説明を行い、続いて4名の研究者が講演しました。
最初にガーナのクワメ・エンクルマ科学技術大学で環境化学分野の研究をしているマリアン・アサントワ・ンカンサ准教授がリモートで参加し、ガーナにおける電子電気機器廃棄物(E-waste)問題の実態とE-wasteを再資源化する取り組みなどについて紹介しました。グローバルサウスの視点から、E-waste問題に限らず、食品ロスやプラスチック廃棄の問題などを含め、責任ある生産と消費(SDG12)のあるべき姿について問題提起がありました。

藤森 崇准教授

続いて龍谷大学の藤森 崇准教授が、発展途上国におけるE-wasteの野焼きによる環境汚染物質の発生メカニズムを放射光によるX線吸収微細構造(XAFS)により解明した研究事例を紹介しました。

阿部 仁准教授

次にKEK物質構造科学研究所の阿部 仁准教授が登壇し、アフリカ大陸に新しい放射光施設を建設する世界的な取り組みについて紹介しました。

梶原夏子主幹研究員

最後に国立環境研究所の梶原夏子主幹研究員が、プラスチックのリサイクルに伴って循環しているPBDE(臭素系難燃剤)の実態について紹介しました。

パネルディスカッションの様子

セッション後半では、国立環境研究所の森口祐一理事がファシリテーターとして加わり、パネルディスカッションが行われました。基礎科学、SDGs、グローバルサウス(アジア、アフリカ、中南米などの途上国)のキーワードの下、登壇者それぞれに対し、基礎科学がどのような役割を果たし、どのような貢献が期待されるのか、などについて意見が交わされました。

先進国(北)の廃棄物のリサイクルのために、発展途上国(南)の環境が脅かされていること、その問題の実態把握やメカニズム解明に基礎科学による事実の積み重ねが貢献していること、それを具体的な政策に結び付けるためには、国連機関や国際条約に関連した活動などの取り組みが重要であることなどについて議論が行われました。

セッション登壇者:
Marian Asantewah Nkansah(クワメ・エンクルマ科学技術大学 化学部 准教授)
藤森 崇(龍谷大学 先端理工学部 准教授)
梶原 夏子(国立環境研究所 資源循環領域 主幹研究員)
阿部 仁(高エネルギー加速器研究機構 物資構造科学研究所 准教授)
森口 祐一(国立環境研究所 理事)
足立 伸一(高エネルギー加速器研究機構 理事)

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