2017年度KEKウィンター・サイエンスキャンプ参加者より

KEKウィンター・サイエンスキャンプ2017の「Cコース:信号を伝送してみよう」に参加した、加藤桃子さん(フランス・ロレーヌ大学大学院物理学科修士1年在学中)と本橋悠人さん(東京大学工学部物理工学科4年在学中)が、後輩達の参考になればとその後の大学生活や現在の暮らしぶりについて海外から記事を寄せてくれましたので、紹介します。加藤さんはサイエンスキャンプでの経験が進路選択の決め手になったとのことです。

加藤桃子さんの寄稿文
本橋悠人さんの寄稿文

KEKウィンターキャンプ2017参加の現European Master of Science in Nuclear Fusion and Engineering Physics M1の加藤桃子より

2017年参加時、私は苫小牧高専電気電子工学科3年で、「Cコース「信号を伝送してみよう」のグループだったと記憶しています。

数年ぶりに連絡した経緯は、同じグループだった本橋くんに先日会ったからです。
KEKのキャンプに参加してからどうなったか、簡単にご報告したいと思い連絡しました。
参加しようか迷っている高校生や高専生の参考になれば幸いです。

苫小牧高専を卒業後、電気通信大学のⅢ類電子工学プログラムに編入しました。
B3の初めに核融合を知り興味を持ち始めて、核融合科学研究所に夏休みのインターンシップに行きました。

B3とB4の間を休学し、日欧産業協力センター主催のVulcanus in Europeプログラムに参加して、2021年9月~2022年3月の間、マドリードで企業インターンシップをしていました。
私の体験談の動画のリンクです、良ければご覧ください。
その冬に念願のITERへの見学も叶いました。

左:インターンシップ中の出張先でのデータ収集 右:ITERに見学に行った際の写真

卒業研究は、多価イオンを研究している中村信行先生のもとで、アルゴンイオンとグラファイトの衝突スペクトルを観測する研究をしていました。

今年(2023年)3月に大学を卒業し、9月からヨーロッパの核融合修士プログラムのM1になりました。
ヨーロッパでは、国を跨いで交流することが大学間でも行われていて、Erasmus+というシステムの一つです。
M1の1年間、Université de LorraineFaculté des Sciences et Technologiesの物理学科に所属し、現在フランスのNancyという町に住んでいます。

左:ナンシーでのプログラムの同級生と担当の教授
右:物理学科の現地の学生と

初めて英語で勉強して、言葉がわからない国で暮らす大変さはありますが、なんとか頑張っていこうというところです。
こちらの先生方はとてもフランクで、日本とまた違った風を感じています。

KEKのキャンプに参加したときは弱冠17歳で、何を勉強したいかもわかっておらず、ただ漠然と大学に編入するのに出願先をどう選ぼうかと悩んでいました。
将来像のイメージもなく、先生方に修士と博士、また研究者とはどんなものかとキャンプで聞いた記憶があります。
結局、大学も東京にあるという理由もあり、電通大にしましたが、B3のとき大学で核融合の話を聞き、一気にのめりこみました。

ITERで働きたいと考えるようになり、早くからヨーロッパに入った方がいいなと思い、ヨーロッパの修士に進学した次第です。
工学科から物理学科に変わって、言語も変わり、初回の授業から全然わからなくてかなり大変ですが、なんとか食らいついて頑張っていこうと思います。

KEKウィンター・サイエンスキャンプは、楽しそう!と感じて参加しましたが、周り回って自分も物理専攻になるとは思っておらず、やはり物理が好きなのかなと感じています。
キャンプで先生方と話したことや、グループでの経験はとても楽しい思い出として残っており、そのときの交流が今も続いていて感謝しています。

高校生の年代の間に研究所で働く方と話せる機会に恵まれたのは本当に良かったと感じています。
帰国した際には、またKEKに顔を出せたらと思います。

フランス、ナンシーより 2023/09/19
European Master of Science in Nuclear Fusion and Engineering Physics (Fusion-EP)
M1 加藤桃子


こんにちは、本橋と申します。
6年前の冬(当時高校2年生)は、ウィンターサイエンスキャンプの参加者でした。その時は「信号を伝送してみよう」で加藤さんと一緒に実験しました。

それから6年がたった僕が何をしているのかを少し紹介することで、ウィンターサイエンスキャンプに応募するか迷っている人が、キャンプでやること・大学で勉強すること・研究することがどう繋がっていくか、イメージが沸けばと思っています。

私は、高校卒業後、大学に入学し工学部物理工学科で物理や実験にかかわる制御理論などについて勉強をしてきました。大きく生活が変わったのは大学4年生の時でした。一年間の留学で、スイス(スイス連邦工科大学チューリッヒ校)に滞在する機会をいただきました。

スイス連邦工科大学 チューリッヒ校のグループルーム

留学中は、原子イオンを使った量子コンピュータの実験の研究をしていました。イオンを量子コンピュータの中で自由自在に動かしていくことができるのは、非常にワクワクします。(興味があればこちら。英語の動画ですが、ぜひ映像だけでも)。

「原子を動かす」と言っても、実際には手で動かせないので電気信号を使ってコントロールをしています。KEKサイエンスキャンプでは信号がどう伝わるのか、を実験していたわけですが、今はそれを使って原子を押したり、止めたりをしています。

土日にはスイスの雄大な山にハイキングに行ってリラックスして、研究に戻って、の繰り返しです。

是非皆さんも、サイエンスキャンプで研究者の先生たちの楽しい生活を聞いてみてください。

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