令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者が4月7日に発表され、KEKから2件が選ばれました。表彰式は4月19日に行われます。
若手科学者賞
「ミューオン線型加速器開発と世界初のミューオン加速実証研究」
加速器研究施設 加速器第二研究系 助教 大谷将士(おおたに まさし)
大谷助教は、ミューオン専用加速器を開発するとともに、3桁以上のミューオンエネルギー冷却を可能にする新技術を実証し、高周波四重極加速器との組み合わせにより世界で初めてミューオンの加速を実現しました。
加速器科学の発展により電子や陽子など様々な粒子が加速され既に多方面で活用されていますが、素粒子ミューオンを加速したミューオンビームは基礎研究から応用研究に至る広い学術分野において活用されると期待されてきました。
この成果は、高い指向性を持つ先駆的なミューオンビームによる異常磁気能率(g-2)の精密測定など次世代の素粒子研究のコア技術です。また、加速技術の発展によって宇宙線ミューオンを上回る高分解能イメージング技術が可能となると期待されています。
※若手科学者賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満(出産・育児により研究に専念できない期間があった場合は、42歳未満)の若手研究者が対象です。
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研究支援賞
「放射化物管理システムの開発と運用による加速器実験への貢献」
共通基盤研究施設 放射線科学センター 専門技師 豊田晃弘(とよだ あきひろ)
豊田専門技師は大量の放射化物を現場で迅速に登録・管理することができる管理システムの構築を行いました。
放射化物とは、高エネルギーの加速器の運転に伴って発生する放射能を持った物質です。KEKの加速器はエネルギーが極めて高く大量の放射化物が発生するので、それらを安全に管理する必要があります。そのためには、特殊で専門的な知識と技術に基づいた独自の放射化物の管理システムの構築が必要でした。
開発したシステムにより、KEKにある大量の放射化物を短期間で登録することに成功しました。
※研究支援賞は、高度で専門的な技術的貢献を通じて研究開発の推進に寄与する活動を行い、顕著な功績があったと認められる個人又はグループが対象です。
関連サイト
文部科学省 令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者等を決定しました
加速器研究施設
共通基盤研究施設 放射線科学センター