「楽しかった」KEKウィンター・サイエンスキャンプ2022を開催

2022年12月25日から28日にかけて、高校生・高専生を対象としたウィンター・サイエンスキャンプを実施しました。今年は3年ぶりにつくばキャンパスで現地開催。初日は悪天候の影響が懸念されましたが、全国から24人の高校生・高専生が集まり、「素粒子」「回折」「加速器」「放射線」をテーマにした4班に分かれて研究体験をしました。

はじめに、本キャンプの導入講義として髙橋将太さん(広報室)が「KEKってどんなところ?」と題し、加速器を使ったKEKの研究概要を説明。続いて、菅野未知央(みちなか)さん(共通基盤研究施設超伝導低温工学センター)が「加速器のための超伝導磁石開発」と題し、最先端の加速器のための超伝導磁石の開発と研究者の仕事について、研究現場の写真や動画を交えて紹介しました。その後、各コースに分かれて実習をスタートしました。

班員と協力してアルミホイルを巻き付けて、宇宙線検出器を作ります

「素粒子」のコースでは、宇宙線検出器を製作し、その原理と基本的な測定方法を学んだあとに宇宙線の速度測定に挑戦しました。「回折」のコースでは、レーザーポインターと回折格子を使って実験しました。回折ピークの位置を光検出器で測定し、格子のスリット幅を計算し、光学顕微鏡を使って目視した値と比較。光が持つ波としての性質の理解を深めました。「加速器」のコースでは、ラジオやテレビで用いられる電磁波の信号伝送の原理を学び、伝送速度を測定。ケーブルの材質による伝送速度の違いを体感しました。「放射線」のコースでは、放射線検出器の回路を製作し、実際に放射線源から出てくる放射線を計測。線源と検出器の間に遮蔽物を挟み、その厚みや材質によって計測数が変化することを確かめ、放射線防護に関する認識を深めました。

測定の誤差について、講師からレクチャーを受けています

どのコースも、データをまとめる途中で、測定方法の工夫や誤差の取り扱いに時間を忘れて没頭していました。あるコースでは、測定値の読み間違いに気がつき3回も測定し直したそうで、それぞれのコースの課題に時間いっぱい真剣に取り組んでいました。

初めて使うオシロスコープに悪戦苦闘中

最終日には、自分たちが集めたデータを使って小林ホールで発表しました。質疑応答も生徒主体で進行し、他コースへの質問もたくさんあり、とても活気あふれるセッションとなりました。

KEKの一番大きなホールで発表と 質疑応答が行われました

Cコースに参加した細川龍一朗(高専2年)さんは「全国の仲間が集まるのはいい機会。地域の特色も知ることができた。議論するのが楽しかった」と全国から集まった仲間との議論を楽しんでくれました。また、Bコースに参加した山口優衣さん(高校1年)は「とことん科学に打ち込むことができ、科学好きの仲間もできた。本当の研究者と、すごく近い距離で話すこともできた。キャンプ中ずっと楽しかった」とサイエンス漬けの日々に刺激を受けたようです。

回路図の通り、配線できてるかな?

3年ぶりの現地開催で対面による実習ができたことについて、今回の校長を務めた菅野さんは「生徒が楽しんでいる様子がダイレクトに伝わり、改めて現地開催できてよかったと感じる。このキャンプの終わりが、今後の縁の始まりになることを願っている」と生徒たちにメッセージを送りました。

集めたデータを整理して、議論しています

また、Dコースの講師を務めた鈴木研人助教(共通基盤研究施設超伝導低温工学センター)は「対面で実習できたので、生徒の細かい表情を見ることができてよかった。議論が脱線することも含めて、生徒の主体性を重視して研究を進めることができた」と振り返りました。

Belle II測定器をのぞきこむ様子

KEKでは、本キャンプの他にも、4月初旬ごろに女子高校生向けの「TYLスクール理系女子キャンプ」、8月初旬ごろに高校生向け素粒子サイエンスキャンプ「Belle Plus」を開催しています。興味のある生徒さんはぜひ参加を検討してみてください。

ウィンター・サイエンスキャンプは、科学技術振興機構(JST)の委託事業として2006年に始まりましたが、2015年からKEKの主催事業になりました。 2022年度は前年度に引き続き、寄附金による事業として実施しました。

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