11月15日、KEKの足立伸一理事とKEK 物質構造科学研究所 放射光科学第二研究系の野澤俊介准教授の「2022年度つくば賞」受賞が発表されました。足立理事と野澤准教授が、KEKの放射光実験施設 フォトンファクトリーにおいて行った共同研究が評価されたものです。
つくば賞は茨城県科学技術振興財団とつくばサイエンス・アカデミーが、茨城県内において科学技術に関する研究に携わり、顕著な研究成果を収めた研究者を顕彰し、研究者の創造的な研究活動を奨励するもので、自然科学分野で1人または1組が受賞します。
フォトンファクトリーでは、1993年に坂部知平(さかべ のりよし)教授(当時)が、1999年に村上洋一准教授(当時)がつくば賞を受賞しています。
受賞理由となった研究主題は「放射光X線による分子動画計測法の開発」です。足立理事と野澤准教授は、フォトンファクトリー・アドバンストリング(PF-AR)のまるでストロボのように高速で点滅する明るいパルス光の特性を生かし、物質構造変化の研究を共同で行ってきました。
化学結合において、原子同士の結合や切断は、ピコ秒からナノ秒のスケールで起こる変化が重要になります。そのような動的な構造情報を得るために、外からの刺激に応答して機能を発揮する物質の変化を刻々と記録する超高速時間分解X線構造計測手法(分子動画計測法)を独自に開発、実用化しました。また、その計測システムをX線自由電子レーザー(XFEL)施設に適用し、溶液中の光化学反応における短寿命化学種の構造決定に成功しました。
この計測法により、光触媒反応など光によって励起する高速反応を理解することが可能となりました。今後、カーボンニュートラルや持続可能性の達成など、課題解決に役立つものと期待されています。