
国立大学法人 総合研究大学院大学(総研大)の2021年度春季学位記授与式が、3月24日にオンライン開催されました。その後、高エネルギー加速器科学研究科(高エネ研究科)では、KEKつくばキャンパスに集まった修了生に磯 暁 研究科長から学位記が手渡されました。KEKで博士になったみなさんが、晴れ晴れとした表情を見せてくれました。
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また、同日、特に優れた学位論文を書いた修了生に対する受賞式も行われました。
高エネルギー加速器科学研究科 物質構造科学専攻の鈴木 雄太(すずき ゆうた)さんが、第8回SOKENDAI賞を受賞しました。SOKENDAI賞は、総研大の理念と目的に照らして特段に顕彰するに相応しい研究活動を行い、その成果を優れた学位論文にまとめて課程を修了し学位を取得する学生を表彰するものです。
鈴木さんの学位論文タイトルは”Crystal Structure Analysis and Visualization of Materials Space Using Machine Learning”(機械学習を用いた結晶構造の分析と物質空間の可視化)です。機械学習や数理最適化の技術を応用したX線回折パターンのデータ解析法を開発し、全自動で熟練者並の解析精度を実現しました。さらに、これまでは具体化が難しかった「物質の結晶構造同士の類似性」を計算機上で定量評価可能にし、構造すなわち性質が似た物質の検索や、多数の物質同士の類似性の可視化を可能にしました。
鈴木 雄太 さんからのメッセージ:
高エネ研究科で機械学習についての研究というのは意外に思われるかもしれませんが、実験とデータ解析は両輪となって進むべき研究の営みで、ビームラインや測定機器の進化によって生み出される大量のデータを解析するための手法の一つとして機械学習が必要とされています。
総研大で情報科学や機械学習について学んだことで、これらの分野の研究者や大学院生との交流も増えました。異分野の方々と交流することで、自分の分野で常識とされる事柄を改めて考えたり、自分の強み・弱みについて考えるきっかけにもなり、とても学びが多い経験でした。
関連記事:
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- KEKプレスリリース 2020/06/04 結晶構造解析の自動化 -ブラックボックス最適化により熟練者を上回る解析精度を達成-
- KEKプレスリリース 2019/04/19 機械学習によりX線吸収スペクトル解析の自動化が可能に-データの類似度に着目し定量的なスペクトルの解析を実現-
関連サイト:
- KEK 物質構造科学研究所 量子ビーム連携研究センター #01 情報科学と量子ビームの融合によるマルチスケール・マルチモーダル構造解析
- 国立研究開発法人科学技術振興機構 ACT-I先端研究フォーラム ~「情報と未来」研究者講演会~
関連動画:YouTube ACT-I先端研究フォーラムチャンネル AIで物質の性質を賢く調べる / 鈴木 雄太

また、高エネルギー加速器科学研究科 素粒子原子核専攻専攻の松本 祥(まつもと あきら)さんが、高エネルギー加速器科学研究科研究科長賞を受賞しました。
松本さんの学位論文タイトルは”Numerical studies on topological aspects of gauge theories”(ゲージ理論のトポロジカルな側面に関する数値的研究)です。ゲージ理論は素粒子物理学におけるとても重要な枠組みで、例えば、クォークとグルーオンの性質を説明する量子色力学(QCD: quantum chromodynamics)もその一種です。松本さんはクォークが持つ「色」の数による物理現象の違いに着目しました。色の数がとても多い場合に分かっていて、逆に2色だけの場合には分かっていない、トポロジカルな(連続変形で変わらない)性質について、既存の計算方法の組み合わせにより間接的に調べる手法を提案しました。
松本 祥 さんからのメッセージ:
私が在籍していたKEK理論センターは素粒子理論の研究所としては国内でも最大規模で、若い研究者も多くオープンな雰囲気の研究所です。様々な研究者と交流し議論する機会が得られ、また総研大の講義では実験や物性の話を聞く機会もあって視野を広げることができました。
西村 淳 教授は学生ひとりひとりの特徴を見定め、的確なアドバイスを与えてくれました。総研大で学んだことは、これから研究を続けていく上で貴重な糧になると思います。
関連サイト:KEK 理論センター
