創設50周年を迎えたKEKつくばキャンパスで9月4日(土)と5日(日)の2日間、地域の方々に研究実験施設に触れていただく「KEK一般公開2021」が開かれました。折からのコロナ禍のため、今年も昨年に引き続いてのオンライン開催となりました。YouTube Live とニコニコ生放送を使って配信。2日間でYouTubeでは延べ6,700人が、ニコニコ生放送では約26,300人が視聴しました。施設見学、解説、対談、落語などの多彩なプログラムに、アンケートには「2日間とも夢中で見てしまいました」(神奈川県40代男性)など好意的な声であふれ返りました。
プログラムの中心は、研究者が実験や装置の仕組みについて現場で実況解説する施設見学です。今回は、フォトンファクトリーやJ-PARCメインリング、J-PARC MLF、超伝導加速空洞試験施設(STF)、低速陽電子実験施設(SPF)などの現場からライブ中継を行いました。ライブ中には視聴者から多くの質問が寄せられるとともに、「かっこいい」「ドキドキする」「分かりやすい」など好意的な書き込みが数多くなされました。またSuperKEKB加速器についても加速器施設で実際に撮影した映像を使って、電子と陽電子のビームが誕生してから光速近くまで加速、衝突、対消滅するまでを「1億kmマラソン」になぞらえた解説が行われました。
落語家の桂福丸さんは「生駒のオーロラ」と題した、オーロラ見学ツアーを巡っての親子のドタバタ劇から最後はほろりとさせる人情噺を披露しました。その後、桂福丸さんとカリフォルニア大学バークレー校の村山斉教授が「ILCってなんやねん」をテーマに対談し、視聴者からの質問も受けました。この企画は、視聴者へのアンケート調査で印象に残ったナンバーワン企画となりました。アンケートの中には、対談中の村山さんに質問した神奈川県の30代女性から「ほんとうにおもしろかった。憧れの村山先生に『いい質問ですね』と言われて今年一番興奮しました」とのコメントがありました。
アニメのエヴァンゲリオン初号機が携行するビーム兵器「ポジトロン(陽電子)ライフル」について、そのような兵器がほんとうに武器として成立するのかという疑問について、東京工業大学の山崎詩郎さんとKEKの研究者2人の3人でまじめに議論しました。その結果、KEKの宮原房史さんからは「陽電子は周辺にガンマ線や電子、陽電子などをまき散らして自爆してしまう。その結果、敵までエネルギーが届かない。それよりも電子ビームを使った方が(武器としては)まだましではないか」という身も蓋もない意見が出て、会場は笑いに包まれました。チャットには「とんでもない電力使って自爆(笑い)」というコメントも。
理論センターの溝口俊弥さんは「超弦理論は本当に素粒子の理論なのか」をテーマに講演しました。そのやや脱線気味で難解な専門用語が飛び交うユニークな話術が楽しくて大好評でした。チャットにも「全然わかんないけどなんか面白い」「ずっと聞いていたい」「きょう一番楽しかった」「めっちゃ面白い」「2時間くらいの特別講義を希望します」など好意的なコメントであふれました。
ほかにも、小惑星探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った試料の分析チームのリーダー、薮田ひかる広島大学教授がリモートで分析の目的や方法を講演しました。また、KEKが国際協力して進めているLHC/ATLAS実験の紹介や、50年前のKEK創設当時をよく知っているOB研究者たちによるざっくばらんなトーク。ほかにも、実際に加速器を製作する活動「AXELATOON」に参加している茨城工業高等専門学校の准教授と学生による同活動の紹介や、中高生・高専生による宇宙線測定アウトリーチ活動「探Q」に参加している山形県の高校生による自分の研究の紹介が行われました。KEKで働く事務職員やポスドク研究者の研究や仕事ぶりを紹介するコーナーやKEKの寄付金チームがKEKで昔使用されていた実験機器の売り払い企画を紹介するコーナーもありました。
また、プログラムの最後には、山内正則機構長と足立伸一広報担当理事が登場し、50周年を迎えたKEKの今後の展望、研究者になったきっかけ、SDGsへの貢献といった幅広い分野についての話でKEK一般公開2021を締めくくりました。
YouTubeのKEK channel( https://www.youtube.com/c/kek1971/featured )に、配信のアーカイブを公開していますので、ぜひ、ご覧ください。