オンラインシンポジウム「KEKにおける新しい研究様式」を開催

世界各地における新型コロナウィルス感染症の拡大が止まらないなか、小林ホールで7月14日オンラインシンポジウム「KEKにおける新しい研究様式」が開かれました。対象はKEK職員、関係コミュニティの研究者や大学院生らで、約200人の参加者がありました。
シンポジウムの狙いは、コロナ禍によって生活習慣から社会のあり方まで大きく変わりつつあるなか、KEKの科学研究はどうあるべきか、そのためには設備や制度に何が求められるか、などについて方向を見定める機会とすることです。山内正則 機構長も冒頭で「このシンポジウムで新しい研究様式に対する切っ掛けをつかんでほしい」とあいさつしました。
最初に内丸幸喜 理事が日本政府の動向を解説。続いて足立一郎 素粒子原子核研究所教授が、BellellやT2K、ハドロン実験、ATLAS、COMETなどの実験グループの生の声を紹介、コロナ禍における状況と対策、そしてその課題について報告しました。
山口誠哉 加速器研究施設長は「加速器の産業・医療連携」をテーマに講演、「加速器にも新しい研究様式が必要で、そのためにはリモート化、ロボット化、AI化が求められる」と話しました。また、真鍋篤 計算科学センター長は、在宅勤務やビデオ会議などについてアフターコロナの計算機環境について報告しました。
後半の千田俊哉 構造生物学研究センター長と若槻荘市 SLAC国立加速器研究所教授、CERNのEckhard Elsen 研究・コンピューティング部門長の3人はリモートで参加。千田センタ-長は、構造生物学におけるウイルス研究の現状を報告。「リモート会議で予定を立てやすくなり、移動時間がなくなったため、論文執筆などに時間をあてられたが、長期化すると研究に支障が出る」と感想を述べました。
若槻教授は、SLACにおける現状と課題や米国内の研究機関の状況、連携体制などについて報告した後、「世界の多くの施設でリモートアクセスが困難だったり自動化が遅れていたりして大きな課題だ。また、サンプルホルダーの標準化も極めて重要」と指摘しました。
Elsen部門長はCERNでのロックダウン前後の状況から再スタートに向けた動きなどを紹介。個人的な感想として「ビデオ会議は今後より重要となるが、個人的な誤解や対立を解消する手段とはなりにくい。また、創造性を育むことも難しい」と述べました。
最後に小林ホールから、大友季哉 物質構造科学研究所教授がMLFでの運転状況、感染防止対策、共同利用への影響、人材育成支援策、リモート実験の環境整備などについて報告があり、リモート実験や代行実験のためにMLFスタッフの負担が増加したと話しました。
KEKでは本シンポジウムでの意見なども踏まえ、ウィズコロナ、ポストコロナにおける新たな研究様式に向けた取り組みを引き続き進めていきます。