宇宙向け電子機器開発加速へ 放射線試験装置、試験施設を整備

「宇宙戦略基金」に提案テーマ3件採択

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
J-PARCセンター

発表のポイント

  • 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が公募した宇宙戦略基金事業技術開発テーマ「宇宙機の環境試験の課題解決」に、日本原子力研究開発機構(JAEA)及び高エネルギー加速器研究機構(KEK)が提案した「東海タンデム加速器」、「J-PARC(リニアック、ハドロン実験施設)」(いずれも茨城県東海村)を活用する3つの開発課題が採択されました。
  • 宇宙利用・宇宙開発が急進する中で、人工衛星など宇宙機に搭載する電子機器の低コスト化・高性能化には、既製品の活用や継続的な技術開発が必要です。しかし、国内では電子機器に悪影響を及ぼす宇宙線への耐性試験を行える装置が不足しており、課題となっています。
  • JAEAとKEKは世界最先端の素粒子原子核物理研究と、加速器や試験装置の開発研究で得た知見を最大限活用し、それぞれに新たな専用の試験装置や施設の整備を進めます。本件を通じて日本の宇宙利用拡大に貢献し、新たな価値を創造してまいります。

概要

宇宙環境には、太陽フレアや銀河宇宙線などに由来する陽子や重イオンが飛び交っています。これらが宇宙機の電子部品に衝突すると、誤作動などを引き起こし、宇宙機の運用に支障を来たします。このため、宇宙機開発では、電子部品に陽子や重イオンを照射して、電子部品がどの程度宇宙線に耐えられるのかを事前に評価し、確認しています。その際、宇宙空間で受ける陽子や重イオンなどを地上で再現し、照射できる放射線試験施設が必要です。しかし現時点では、国内で対応可能な施設は限られています。

近年、国際的な宇宙開発競争が激化する中、宇宙関連産業への参入増加とともに、宇宙機の低コスト化・開発期間短縮への要求が高まり、民生用電子部品(汎用品)を利用する動きが拡大しています。同時に、試験ニーズも急増し、国内の放射線試験施設の不足が課題として認識されるようになりました。今後の宇宙機の製造機数増加などを考慮すると、数年後には陽子で年間約300時間、重イオンでは年間約1,100時間の試験時間が追加で不足するとされています。

そこで、日本原子力研究開発機構(JAEA)及び高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が令和7年度に公募した宇宙戦略基金事業の技術開発テーマ「宇宙機の環境試験の課題解決 −放射線試験の課題解決−」に対し、JAEA、KEKそれぞれが所有する施設を活用し、放射線試験装置・施設を整備する計3件の技術開発課題を独立で提案しました。その結果、3件すべてが令和8年2月に採択されました。各課題は同年10月までに補助金の交付決定を受け、事業を開始しています。

採択に基づき整備する放射線試験装置・施設は、いずれもJAEA原子力科学研究所(茨城県東海村)敷地内にある以下の3施設内に設置します。

・東海タンデム加速器(重イオン)/JAEA
・J-PARCリニアック(陽子)/JAEA
・J-PARCハドロン実験施設(陽子)/KEK

実施期間は最長で約5年を予定しています。JAEAとKEKが事業を完遂することで、陽子も重イオンも照射できる宇宙機放射線試験施設群が形成され、宇宙開発に係る多様なユーザーの要望に応えることができる国内唯一の地域となります。また、稼働後の運営面では、利用者の利便性向上に向けた連携も目指していく方針です。これまでJAEAとKEKが培ってきた世界最先端の素粒子原子核物理研究と、加速器や試験装置の開発研究で得た知見を活用し、日本の宇宙利用拡大に貢献し、新たな価値を創造してまいります。

詳細は 日本原子力研究開発機構 のホームページをご覧ください。

お問い合わせ先

高エネルギー加速器研究機構(KEK)広報室
Tel : 029-879-6047
e-mail : press@kek.jp