大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
NTT株式会社
本発表のストーリー
Question
量子コンピュータや量子センサは、多様な方式で研究開発が進められています。超伝導方式では、実用化に向けて量子ビットや共振器などの各部品の性能向上が必須ですが、さまざまな困難があり、決定的な改良手法は見つかっていません。
Findings
素粒子物理学実験や物性実験用の放射光源などの先端加速器に近年用いられている超伝導加速空洞の表面処理技術を、量子技術で利用される三次元空洞共振器用に適用し最適化したところ、共振器の性能指標が歴代最高値の2倍となる約30億を達成しました。これは量子向けの空洞共振器として世界最高水準の性能です。
Meaning
成果は、1980年代から蓄積されてきた超伝導加速空洞技術の量子応用を切り拓くものであり、高性能な超伝導量子ビットの実現に寄与が期待されるだけでなく、量子情報を長時間保持可能な量子メモリや、ダークマター(暗黒物質)検出にもつながる超高感度のセンシング技術への応用が期待されます。


概要
大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(本部:茨城県つくば市、機構長:浅井祥仁)とNTT株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は共同で、ニオブ製の三次元共振器に対して、超伝導加速空洞で開発された表面化学処理と「中温アニーリング」(※1)という手法を適用することで、共振器の性能指標となる内部Q値(※2)が世界最高水準となる約30億(10億=10の9乗)を達成しました。また中温アニーリング後のニオブ製共振器は、冷却サイクルや大気暴露に対して性能が安定しており、実用上での利点があることも明らかになりました。本成果は、安定して高い性能を発揮する超伝導量子ビットの開発や、量子情報を長時間保持する量子メモリ、共振器特性を活かしたセンシング技術への応用が見込まれ、粒子加速器分野で長年培われた知見が量子技術の分野でも有効であることを示しています。
本成果は、米国科学誌「Physical Review Applied」の Editors’ Suggestionに選ばれ、2026年3月24日にオンライン版に掲載されました。
※1. 中温アニーリング:
加速空洞研究で古くから採用されている熱処理として、700-900℃で数時間加熱する高温アニーリングと100℃程度で48時間加熱する低温ベークがあります。比較的最近になって、それらの中間の温度で行う熱処理に注目が集まりつつあり、中温アニーリングや中温ベークと呼ばれています。
※2. Q値:
共振器の性能を表す指標であり、共振の周波数を共振器のエネルギー損失率で割ったものに対応します。Q値が高いほどエネルギー損失率が低く、共振器に蓄えられたエネルギーを長時間保持できることを意味します。またQ値は共振の周波数を共振ピークの半値幅で割った値としても定義され、Q値が高いほど共振器のピークは鋭くなり、高いQ値の共振器は周波数敏感なセンサとして利用できます。
詳しくは プレスリリース をご参照ください。
お問い合わせ先
高エネルギー加速器研究機構(KEK)広報室
Tel : 029-879-6047
e-mail : press@kek.jp