東京科学大学
高エネルギー加速器研究機構
J-PARCセンター
ポイント
- 中低温におけるプロトン伝導度の世界最高値を更新する安定な新セラミック材料を発見
- 2種類の6価のドナー元素を同時に添加する独自の材料設計により、プロトンの高い濃度かつ高速なプロトン伝導を実現
- 低温で作動する高効率燃料電池と電解セルの実用化を加速する基盤技術として期待
概要
東京科学大学(Science Tokyo) 理学院 化学系の八島正知教授、梅田健成大学院生(研究当時修士課程2年次)、齊藤馨助教からなる研究グループは、中低温(200~400℃)で世界最高(2026年1月時点)のプロトン(H+、水素イオン)伝導度と高い化学的安定性を併せ持つ新しいセラミック材料BaSc0.8Mo0.1W0.1O2.8を発見しました(図)。
本材料は、193℃で実用化の目安となる 10-2 S cm-1、330℃で 0.10 S cm-1という、従来材料を大きく上回る極めて高いプロトン伝導度「超プロトン伝導」を示します(単位ジーメンスSは抵抗オームΩの逆数)。さらに、CO2、O2、H2雰囲気下などの実用環境でも安定に動作することを確認しました。
研究グループは、従来ほとんど試みられなかった「ドナー元素を2種類同時に添加する共添加戦略」を、大量の酸素欠損を持つペロブスカイト型酸化物BaScO2.5に適用しました。その結果、大量の酸素空孔を完全に水和させることに成功し、高いプロトン濃度と高い拡散係数を両立させることができました。さらに、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の本田孝志助教との共同研究による中性子回折実験と理論計算から、従来のアクセプターを添加した材料で問題となっていたプロトンの捕捉(トラップ)や活性化エネルギーの増大が抑制されていることを解明しました。また、4価よりも価数が高い6価のドーパント(添加剤、不純物)を添加することにより、プロトン濃度を増やし過ぎないことで、活性化エネルギーを低くできたことも解明しました。このため、本材料は中低温でも高速にプロトンが移動でき、極めて高い伝導度を示します。本成果は、低温で高効率に動作する次世代燃料電池(プロトンセラミック燃料電池:PCFC)や水蒸気電解セル(PCEC)の実用化に向けた重要な材料設計指針を提示するものです。 本研究成果は、2026年1月19日(現地時間)に国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」電子版に掲載されました。

本研究における中性子回折実験は大強度陽子加速器施設 物質・生命科学実験施設BL21NOVA(課題番号:2020L0804、2020L0802、2020L0801、2024A0718、2024B0199)により実施されました。
詳しくは プレスリリース をご参照ください。
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