理化学研究所
東京大学
高エネルギー加速器研究機構
概要
理化学研究所(理研)創発物性科学研究センタートポロジカルエレクトロニクス研究チームの佐藤雄貴特別研究員、川村稔チームディレクター、強相関量子伝導研究チームの十倉好紀チームディレクター(東京大学卓越教授/東京大学国際高等研究所東京カレッジ)、計算物質科学研究チームの有田亮太郎チームディレクター(東京大学大学院理学系研究科教授)、東京大学大学院工学系研究科の永濱壮真博士課程学生、塚﨑敦教授、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の佐賀山基准教授らの共同研究グループは、結晶が本来持つ低温で示すひずみを、薄膜試料において効果的に抑制し超伝導を発現させる方法を実証しました。
本研究成果は、物質の性質を外部から制御できる新しい手法を提案するものであり、今後、さまざまな物質に適用することで半導体工学や超伝導電気回路といった物質工学の分野でさらなる応用が期待されます。
薄膜物質の研究においては、高い結晶品質を持つ物質を合成するために、通常、基板1格子の上に薄膜1格子が成長するように物質設計がなされます。本研究ではこの基本指針に反して、テルル化カドミウム基板5格子の上にテルル化鉄薄膜がちょうど6格子成長することを発見しました。これは二つの物質の格子間隔の整数比の関係を満たす特殊な格子整合(二つの材料の格子の合致)です。
このような整数比の格子整合においては、基板と薄膜の結晶が対応しない箇所(転位)が必ず生じるため、通常は結晶の品質が損なわれると考えられていました。共同研究グループはX線回折実験を行い、薄膜の結晶構造を低温まで詳細に調べました。その結果、テルル化鉄が低温において本来示す結晶のひずみが、整数比で整合した薄膜試料においては強く抑制されていること、さらにこのひずみが抑制された薄膜は低温で超伝導を示すことを発見しました。
本研究は、科学雑誌『Nature Communications』オンライン版(12月5日付)に掲載されました。

本研究における実験の一部は高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所放射光共同利用実験課題(課題番号:2022G551)により、KEKの放射光実験施設フォトンファクトリーのBL-4Cで実施されました。
詳しくは プレスリリース をご参照ください。
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