ダイヤモンド量子センサによる暗黒物質探査法を提唱

―軽い暗黒物質質量の幅広い領域を高感度に探索へ―

京都大学
高エネルギー加速器研究機構(KEK)
KEK 量子場計測システム国際拠点(WPI-QUP)

概要

我々の知る原子、分子などの物質は、宇宙に存在する全物質・エネルギーのわずか5%に過ぎないことが、これまでの素粒子や宇宙の研究から分かってきています。残りの95%のうち、27%が暗黒物質とよばれる正体不明の物質、68%が暗黒エネルギーとよばれる謎のエネルギーであるとされています。現代物理学の未解決問題を解決すべく、探索実験が世界各国で精力的に進められています。

ローレンス・バークレー国立研究所(研究当時、現:マサチューセッツ工科大学研究員)千草颯 研究員、高エネルギー加速器研究機構量子場計測システム国際拠点/素粒子原子核研究所 羽澄昌史 特任教授、京都大学化学研究所 E. D. Herbschleb 特定助教、中央大学理工学部 松崎雄一郎 准教授、京都大学化学研究所 水落憲和 教授、東北大学理学部 中山和則 准教授らの研究グループは、ダイヤモンド中のスピンと暗黒物質が相互作用することを利用する新たな探索法を提唱しました。既存の技術を用いて、暗黒物質の有力候補であるアクシオン[注1]に対し、十分な探索が行われていない、信号周波数にして100 Hz以下、質量にして電子の質量の1018分の1以下の幅広い領域で世界最高の制限がつけられ得ることを示しました。検出に用いる核スピンの核種を変えることにより、環境磁場などの微弱なノイズと、暗黒物質由来の信号を区別することもでき、今後の精密な観測が期待されます。

本研究成果は、2025年4月29日に米国の国際学術誌「Physical Review D」にオンライン掲載されました。

(左) ダイヤモンドのNV中心の電子スピン(オレンジ色の矢印)は、磁場に対して非常に敏感である一方、窒素の核スピン(マゼンタ色の矢印)は低い磁気回転比のため、磁場に対してそれほど敏感ではありません。(右) しかし、暗黒物質のアクシオン場の勾配との結合にはそのような制限がないため、核スピンは長いコヒーレンス時間を利用してこの暗黒物質候補を高感度に検出することが期待できます。

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