室温で情報の読み書きが可能な交代磁性体(「第三の磁性体」)を発見

超高密度・超高速な次世代の情報媒体に

東京大学
理化学研究所
J-PARCセンター
高エネルギー加速器研究機構
科学技術振興機構(JST)

概要

東京大学大学院工学系研究科の関 真一郎教授、高木 里奈助教(現:同大学物性研究所准教授)、同大学工学部の開田 亮佑学部生(現:同大学大学院理学系研究科大学院生)、同大学先端科学技術研究センターの有田 亮太郎教授(現:同大学大学院理学系研究科教授、理化学研究所チームリーダー)、野本 拓也講師(現:東京都立大学准教授)らの研究グループは、交代磁性体(「第三の磁性体」)と呼ばれる新しいカテゴリの磁性体の物質探索を行い、室温で情報の読み書きが可能な世界初の物質の発見に成功しました。

現在利用されている磁気記憶素子では、強磁性体における↑と↓のスピン状態を利用して、情報の記憶が行われています。一方で2020年代に入り、↑↓と↓↑のスピン状態で情報を記憶し、かつ強磁性体と同等の手法で情報の読み書きが可能な、「交代磁性体」の概念が理論的に提案され、注目を集めています(図1)。本研究では、磁性半導体であるFeS(硫化鉄)が室温で動作可能な交代磁性体であることを実験的に明らかにするとともに、外場(電場、磁場など)のない状態で情報が不揮発に保持されること、さらに↑↓と↓↑のスピン状態の電気的な読み出しが可能であることを実証しました。

交代磁性体は、従来利用されてきた強磁性体と異なり、①ビット間干渉の原因となる漏れ磁場が存在しないため素子の集積化に有利、②応答速度が100倍以上高速、③磁気的な外乱に対する耐性が高い、といった、応用上有利な特徴を持ちます。今回の室温で情報の読み書きが可能な交代磁性体の発見は、その超高密度・超高速な次世代の情報媒体としての活用につながることが期待されます。

本研究成果は、2024年12月13日(英国時間)に英国科学誌「Nature Materials」のオンライン版に掲載されました。

強磁性体、反磁性体、交代磁性体のスピン状態を比較した図。
図1:交代磁性体の概念図
これまでに知られていた2つの代表的な磁性体(強磁性体・反強磁性体)と、交代磁性体を比較したもの。赤い矢印はスピンの向きを表している。一般的な反強磁性体の場合、↑↓と↓↑のスピン状態が平行移動によって一致してしまうため、2つの状態を区別することができない。交代磁性体は、反平行なスピン配列と、特殊な対称性の原子配列を併せ持っており、↑↓と↓↑の2つのスピン状態が区別可能となっている。

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