多彩なスピン構造の間のトポロジカル数スイッチングに成功

超高密度な新しい情報担体としての活用に期待

東京大学
理化学研究所
北海道大学
J-PARCセンター
高エネルギー加速器研究機構
科学技術振興機構(JST)

発表のポイント

  • 希土類合金(GdRu2Ge2)において、直径2.7ナノメートルの極小サイズの磁気スキルミオン(粒子性を有する渦状の電子スピン構造)を発見しました。
  • 外部磁場の強さによって、「楕円形スキルミオン」や「メロン-アンチメロン分子」、「円形スキルミオン」という多彩なスピン構造が発現することを明らかにしました。
  • 極小サイズのスキルミオンに関する新たな物質設計指針を提示するとともに、外部磁場による多値メモリ動作といった新しい応用につながる可能性を秘めています。
本研究で発見した希土類合金GdRu2Ge2で実現する多彩なスピン構造の概念図

概要

東京大学大学院工学系研究科の吉持遥人 大学院生、高木里奈 助教(研究当時)、関真一郎 准教授らの研究グループは、同大学物性研究所の中島多朗 准教授、北海道大学大学院理学研究院の速水賢 准教授らとの共同研究を通じて、GdRu2Ge2という希土類合金において、外部磁場の大きさを変化させることで、「楕円形スキルミオン」や「メロン-アンチメロン分子」、「円形スキルミオン」といった多彩なスピン構造を観測することに成功しました。

磁性体で見られる電子スピンの渦構造である磁気スキルミオンは、トポロジーに保護された安定な粒子として振る舞うことから、次世代の情報担体の候補として注目を集めています。スキルミオンは従来、対称性の低い結晶構造を有する物質のみで発現すると考えられてきました。しかしながら、近年では新しい形成機構によって、対称性の高い物質において直径数ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)の極小サイズのスキルミオンが報告されています。

そこで本研究では、希土類合金GdRu2Ge2を対象として研究を行った結果、本物質では直径2.7ナノメートルの極小サイズのスキルミオンが実現しており、さらに外部磁場の大きさに応じて複数の多彩なスピン構造が発現することを明らかにしました。本成果は、極小サイズのスキルミオンにまつわる新しい物質設計指針を与える結果であることに加え、本物質で見られるスキルミオンとメロン-アンチメロン分子は異なるトポロジカル数によって特徴付けられることから、外部磁場による多値メモリ動作といった新たな応用展開につながる可能性を秘めています。

本研究成果は2024年4月1日(英国夏時間)、英国科学誌「Nature Physics」オンライン版に掲載されました。

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