理想的な乱数実現へ -「パリティ対称性」利用が有効-

大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
国立大学法人 東京大学大学院工学系研究科

概 要

高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所・理論センター量子基礎論グループの筒井泉特別准教授は、三菱電機株式会社情報技術総合研究所の鶴丸豊広主席技師長、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の佐々木寿彦講師との共同研究において、パリティ(3次元空間の反転に対する)対称性を持つ原子核の崩壊現象から生成される量子乱数のランダム性と秘匿性に、厳密な証明を与えることに世界で初めて成功しました。

原子核の崩壊現象を乱数生成のために利用する試みは、以前から(パリティ対称性を考慮しない方式で)進められてきたものですが、今回のパリティ対称性に基づく放射方向の測定を組み込むことにより、信頼性の保証された小型の乱数生成器の実用化が期待できることになります。

なお、この研究成果は、Communications Physics誌に7月1日付でオンライン掲載されました。

本研究成果のポイント

・原子核の崩壊のタイミングは量子現象として本質的にランダムなものだと予想されており、これに基づく乱数生成の方法が提案されていますが、そのランダム性と秘匿性の厳密な証明はなされていませんでした。今回の研究は、核崩壊がパリティ対称性を持つ場合には、これらの証明が可能であることを示したものです。

・この研究は、量子の確率性と並んでパリティ対称性という物理学の原理的な性質が、理想的な量子乱数生成の実現に重要な役割を果たすことを示すものです。従来は関係性が薄かった量子情報と素粒子・原子核物理分野の間に、新たな連携の可能性を切り拓くものになっています。

参考資料

自然法則に裏打ちされた実用的乱数実現へー日々の買い物もより安全にー

詳しくは  プレスリリース  をご参照ください。