報道関係者各位
高エネルギー加速器研究機構
高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、6月30日に始まる国連の「持続可能な発展のための国際基礎科学年(IYBSSD)」(The International Year of Basic Sciences for Sustainable Development)の趣旨に賛同し、日本から唯一の創設パートナーとして本国際年に関する国内外の取組みを推進します。
国連は2021年12月2日の総会で、2022年をIYBSSDとすることを決議しました。持続可能な発展のための基礎科学の重要性を認め、認識を高めるよう呼びかけるものです。
基礎科学はこの世界を根源的に理解したいという科学者の好奇心に基づくもので、科学者の自由な発想が重要です。研究は長期にわたることも少なくありませんが、人類の知に貢献する一方で、思いもかけない形でイノベーションにつながることもよく知られています。しかし、ともすれば短期的な成果を求める風潮のなかで、その重要性が忘れられがちでもあります。
しかし国連総会の決議は「人類にとっての基礎科学の価値の高さ」に言及し、「基礎科学への認識を高め、教育を強化することが、持続可能な発展を達成し、世界中の人々の生活の質を向上させるために不可欠である」としました。また「基礎科学と新しい技術は情報へのアクセスを提供し、個人、コミュニティー、社会の健康と福祉を向上させることによって、人類のニーズに応えている」と強調しました。
基礎科学から生まれたイノベーションは、枚挙にいとまがありません。
私たちの生活に欠かせなくなったインターネットのウェブの仕組みは基礎科学における国際的な共同研究での必要性から考案され、検索大手グーグルは数学的なアイデアから生まれました。人工知能(AI)は統計学的なモデルの上に構築され、今後、社会のあらゆる局面に影響を与えていくでしょう。DNAの発見は医学に大きな変革を起こしました。
IYBSSD2022は、7月8日にパリのユネスコ本部で開催される開会式で実質的に始まります。2023年6月30日まで世界各地で開かれるイベントや情報発信を通じ、持続可能な発展のための基礎科学の重要性を訴えていきます。
KEKは大型加速器を中心施設とする国際的な共同利用及び共同研究の拠点であり、宇宙・物質・生命の謎を解明するための基礎科学やその応用研究を推進しています。その研究成果は産業界においても活用され、大学の研究・教育機能の強化にも貢献してきました。今後もさらに持続可能な社会づくりに貢献したいと考えており、IYBSSD2022の考え方に共鳴し、参加を決めました。日本から創設パートナーとして参加する機関はKEKが唯一となります。
IYBSSD2022の活動を主導・組織化する運営委員会メンバーには、国際純粋および応用物理学連合(IUPAP)や、欧州合同原子核研究機関(CERN)などが含まれ、KEKは委員会のメンバーとして、IYBSSD2022の活動の意思決定に加わるほか、IYBSSD2022関連の国際会議への参加、IYBSSD2022の情報をさまざまな手段で発信していく役割を担います。
KEKでは今後、IYBSSD2022の趣旨に沿ったイベントの開催や情報発信を進めます。第一弾として7月上旬ごろに「カーボンニュートラル実現に向けたKEKの取り組み」小冊子を発行して配布します。また9月3~4日予定のKEK一般公開でもIYBSSD2022をPRするオンラインイベントを開催します。
またIYBSSD2022のサポート機関となっている日本学術会議と連携し、基礎科学と持続的発展との関係に焦点を当てたフォーラムやシンポジウムを開催していきます。IYBSSD2022に協賛する国内の学会などの機関は173に達しています(2022年6月6日現在)。これらの機関による関連イベントが今春からすでに開催されています。
関連サイト
「持続可能な発展のための国際基礎科学年(IYBSSD)」公式サイト(英語)
国内協賛機関
関連イベント