国立大学法人筑波大学
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
概要
ポリアニリンは、低コストで電気伝導性が高く、水中で合成できることから、多方面で研究・応用が行われている導電性ポリマーの一つです。しかし、有機溶媒に溶けにくいために他のプラスチックと複合化することが難しく、また、熱溶融性がなく加工性が低いといった難点があり、工業的応用はあまり進んでいません。
本研究では、微量のヨウ素を添加することにより、ポリアニリンをアルコール中で合成することに成功しました。同様の方法で、トルエンやクロロホルムなどの汎用有機溶媒中でも、ポリアニリンを簡便に合成することができます。
これにより、ポリアニリンと、有機溶媒に溶ける物質との複合化が可能となり、例えば、導電性を持つ柔軟なゴムや半透明材料といった、異なるポリマーの特徴を併せ持つ導電性ポリマーコンポジットを作成することが可能となります。
本研究成果のポイント
本研究では、アニリンと有機スルホン酸またはアニリン塩を、エタノール、クロロホルム、トルエンなどの有機溶媒に加え、少量のヨウ素を添加し、攪拌するのみで、ポリアニリン(エメラルジン)を合成することに成功しました。ヨウ素は、重合反応の初期段階でモノマーにラジカルを発生させるため、重合活性が向上し、さらに酸化剤を加えることにより重合が進行します。このポリアニリンの導電キャリヤーであるポーラロンの存在を、電子スピン共鳴法(ESR=Electron Spin Resonance)で確認するとともに、四端子法で電気伝導性を評価しました。さらに有機溶媒にヒドロキシプロピルロース液晶やアクリル樹脂、ポリスチレンなどのプラスチックを溶解し、その溶液中でアニリンの重合を行うと、これらのプラスチックとアニリンが分子レベルで複合化したポリマーコンポジットが作成できることを見いだしました。このようなポリマーコンポジットのミクロ構造を放射光X線回折装置(高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 フォトンファクトリーのビームラインBL-8B)により評価したところ、コンポジット化に基づく分子レベルでの周期性構造が確認されました。
詳しくは プレスリリース をご参照ください。