エネルギーは、電流ではなく「摩擦」で失われていた ~電気自動車用モーターの効率化に向けた新発見~

大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構

概要

高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所 塚原宙 協力研究員(研究当時は研究員)は、産業技術総合研究所エレクトロニクス・製造領域 今村裕志 研究チーム長、物質・材料研究機構 三俣千春 特別研究員、オーストラリア モナッシュ大学 鈴木清策教授、および高エネルギー加速器研究機構 小野寛太特別教授と共同で、エネルギー損失が少ないモーターの主要部品として使用されるナノ結晶軟磁性材料のエネルギー損失機構をコンピューターシミュレーションにより明らかにしました。

ナノ結晶軟磁性材料に与えられた磁気エネルギーは、結晶格子を歪ませ、力学エネルギーに変換されます。この力学エネルギーは、磁区構造の変化に伴う磁壁移動によって格子歪が緩和されることで、格子振動、すなわち熱エネルギーに変換されて失われるため、エネルギー損失が生じます。

この新たなエネルギー損失機構の解明はモーターのエネルギー効率の更なる向上を可能にします。

本研究は2022年5月20日に NPG Asia Materials 誌でオンライン公開されました。本研究はトヨタ自動車株式会社の支援により行われました。

本研究成果のポイント

●金属などに電流が流れると、電気抵抗による熱が発生してエネルギーが失われる

●電気自動車へ応用が期待される高性能モーターは、電流が流れない材料を使っているのにエネルギー損失があるのが謎だった

●計算機シミュレーションの結果、抵抗による発熱ではなく金属内部のある種の「摩擦」現象が原因とわかった

●材料設計に生かして輸送部門のCO2排出削減へ

詳しくは  プレスリリース  をご参照ください。