量子場計測システム国際拠点(QUP)
高エネルギー加速器研究機構(KEK)
文部科学省が推進する「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」の新拠点として「量子場計測システム国際拠点(QUP)」がKEKに設置されることに関しては、前回10月8日にお伝えしたところですが(https://www.kek.jp/ja/press/202110081330/)、QUPは、2021年12月16日に正式に発足することとなりました。
KEKは、QUPの拠点長に羽澄昌史教授を任命しました。副拠点長には花垣和則教授、事務部門長には徳宿克夫教授が就任し、予定通り12名の主任研究者(PI)を任命します。さらに、研究教授、ポスドク、事務スタッフも近日中に公募し、今後2年間で関係者は約110名になる予定です。QUPのキャッチフレーズは、「新しい『眼』を人類にもたらす」です。物理学では、ノーベル賞を受賞した過去の研究に見られるように、現在の知識の基礎となる理論を確立するための新しい研究方法や手段が高く評価されています。本拠点では、物理学の本質に立ち返り、素粒子物理学、宇宙物理学、物性物理学、計測科学、システム科学などを統合して、新しい方法論を開発する融合的な研究を行います。QUPの発明・開発は、自然界の最も基本的な対象である「量子場」に基づいて行われます。
9月末の選考後、拠点長とPI予定者達は、研究計画について議論してきました。 羽澄教授は、「共同研究について話し合えば話し合うほど、新しいアイデアが出てきます。QUPはその1つ目の旗艦プロジェクトとして、LiteBIRD衛星用の新しい超伝導センサーシステムの開発を選択しました。2つ目の旗艦プロジェクトとしては、新たな量子場を発見するための革新的な提案を受け付ける公募の実施が想定されています。私はこれを “プロジェクトQ “と名付けました。量子計測の飛躍を目指し、QUPはプロジェクトQの公募を通して世界に開かれた拠点となります」と述べます。
QUPの強みは、対象とする技術の幅広さにあり、物理学をはじめとする様々な学問分野への応用や、その広大で高度な融合を実現します。それによりスマートシティに代表される未来社会への実装に係る道筋をつけることができます。
株式会社豊田中央研究所(TCRDL)の飯塚英男博士は、次のように述べています。「当初、私たちはKEKとトヨタグループは全く別世界にいると思っていました。その後、羽澄教授との議論を通じて、両者の技術にはさまざまな共通点があることに気づきました。QUPは、異なる科学技術分野を融合するためのメルティングポットになると考えます」。飯塚氏は、既にQUPで、量子場により生じる力の応用に関する研究計画を立案しました。
また、ローレンス・バークレー国立研究所のモーリス・ガルシア-シベレス博士も、「この革新的な取り組みに参加できることは非常にエキサイティングです。QUPでは、極度に高い処理速度や放射線環境に対応したものから、最も静かな低ノイズ環境でのかすかなささやきのような信号を測定するものまで、新しい電子デバイスや量子検出器(「新しい眼」)を共同で開発することになります。これらの新技術により、素粒子とその相互作用を正確に測定したり、普通では捕らえ難いダークマター粒子を探索したりすることが可能になります。」と述べます。
QUPのPIは以下の人達です(敬称略、括弧内は所属等)。
羽澄昌史(KEK、QUP拠点長)
ダニエラ・ボルトレット(オックスフォード大学)
モーリス・ガルシア・シベレス(ローレンス・バークレー国立研究所)
長谷川雅也(KEK)
服部香里(産業技術総合研究所
飯塚英男(株式会社豊田中央研究所)
エイドリアン・T・リー(カリフォルニア大学バークレー校)
宮原正也(KEK)
中浜優(KEK)
中山和則(東北大学)
谷口七重(KEK)
外川学(KEK)
山崎典子(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)
QUPは、「羽澄船長」 の旗のもと、多様な分野の研究者とともに、様々な量子計測の開発に向けた航海を開始します。
QUPスタートアップメンバーとPI
QUPのPIの人達