ディープラーニングによって大幅な統計ノイズの低減に成功~中性子実験の測定時間を1/10以下に短縮、新規材料開発等に貢献〜

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
J-PARCセンター

概要

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター/大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の青木裕之研究主幹/特別教授らの研究グループは、ディープラーニング(深層学習とも呼ばれる)を適用することで、薄膜材料の評価に用いられる中性子反射率測定の測定効率を向上させる手法を開発しました。

中性子反射率法は材料の表面や電池の内部構造を調べるために用いられていますが、微細の構造を精度高く評価するためには長時間の測定が必要となります。大型施設でしか使用できない中性子は稼働期間が限られていることから、可能な限り短時間で精度の高い測定を行うことが求められます。本研究では、中性子反射率データに入り込むノイズの特徴をディープラーニングによって学習し、短時間で測定されたデータからノイズを除去することで真の信号を抽出することを可能にしました。今回開発した手法によって、これまでの1/10以下の時間で測定したデータでも従来と同程度の精度の構造評価が可能となりました。これまで数十分〜数時間を要していた測定時間を大幅に短縮できるため、大型施設の限られたマシンタイムを有効に活用でき、より多くの試料の評価が可能になります。また、時間とともに変化する試料に対して、その変化の様子を高速に捉えることが可能になるほか、従来の技術では非現実的な測定時間が必要だった特殊な実験も可能になるものと考えられます。本手法は中性子反射率だけでなく、散乱実験など様々な測定にも応用可能であり、各種材料の研究開発を加速するものと期待されます。

本研究成果は、令和3年11月22日 発行の国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

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