金属が破壊する瞬間に出現する不思議な原子配列を発見

金属銅の破壊直前の原子配列構造(a)および衝撃前の構造(b)

大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構

概要

大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の丹羽尉博技師、高橋慧博士研究員、一柳光平研究員、阿部仁准教授、木村正雄教授、European XFEL 佐藤篤志 シニア・サイエンティストからなる研究グループは、レーザー衝撃による金属銅の破壊に伴う原子構造の変化を、放射光を用いたX線吸収分光とX線回折を併用して調べ、破壊する瞬間に不思議な原子配列が出現することを初めて見いだしました。

レーザー照射された銅は時間とともに、(i) 弾性変形(時間t = 0〜20 ナノ秒)、(ii) 塑性変形(t = 20〜50 ナノ秒)を経て、(iii) 近接する原子間の構造は大きく乱れているのに、数100個の原子列全体では結晶の特定方位での配列が揃っているという不思議な原子配列状態(“short-range-disorder-only”stateと命名)(t = 50〜320 ナノ秒)が出現し破壊に至ることが本研究により明らかになりました。

本研究のアプローチ法および得られた情報は、社会インフラ構造材料として信頼性が求められる金属系材料の破壊メカニズムの理解と制御に重要な知見を与える(工学的重要性)とともに、従来の材料科学分野ではほとんど例の無い不思議な原子配列状態(“short-range-disorder-only”state)を見いだした(学術的重要性)という両点で今後の展開が期待できます。

この研究成果は、10月26日にMaterials Science & Engineering Aに掲載されました。

(DOI: 10.1016/j.msea.2021.142199)

本研究成果のポイント

・金属銅の破壊に伴う原子構造の変化を、放射光を用いてナノ秒(10億分の1秒)の時間分解能で計測
・2つの分析法を併用することにより、破壊の瞬間の精密な原子構造がわかった
・破壊する瞬間に、「近接する原子間の構造は大きく乱れているのに、数100個の原子列全体では結晶の特定方位での配列が揃っている」という不思議な原子配列状態が出現することを発見。破壊メカニズムの理解と制御に重要な知見

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