脱窒菌から取り出した亜硝酸還元酵素の構造解析に成功 高精度クライオ電子顕微鏡の画像を解析 環境浄化技術の開発に期待

脱窒菌から取り出した亜硝酸還元酵素の構造解析に成功
図1. 今回得られたCuNiRのCryo-EMマップ(左:pH 6.2、右:pH 8.1)。色は解像度を表している。

茨城大学
高エネルギー加速器研究機構

概要

茨城大学大学院理工学研究科(理学野)の山口峻英助教、高妻孝光教授と、高エネルギー加速器研究機構(KEK) 物質構造科学研究所の千田俊哉教授、安達成彦特任准教授、守屋俊夫特任准教授らの共同研究グループは、クライオ電子顕微鏡法(Cryo-EM法)を用いて、環境浄化に有用な脱窒菌から取り出した銅含有亜硝酸還元酵素(CuNiR)の構造を高精度に決定しました。

Cryo-EM法で、CuNiRのようなサイズの小さいタンパク質の構造を精度良く求めることは通常困難ですが、研究グループは、物質構造科学研究所の構造生物学研究センターにある電子顕微鏡を用いて撮影した分子画像を適切に解析していくことで、CuNiRの構造を3オングストローム(1オングストロームは100億分の1メートル)を切る解像度で構造を得ました。これまでに報告されたX線結晶構造解析による分子構造は、結晶中に閉じ込められることによる歪みとX線による損傷を含んでいました。しかし、今回Cryo-EM法で得た構造は、溶液中という生体内により近い状態で瞬間凍結され、極低温に保たれたまま撮影されたため、これらの歪みや損傷を含みません。

本研究による成果は、酵素利用技術や人工酵素の設計・開発等による水環境・土壌の浄化に貢献することが期待されます。また、結晶による歪みや損傷を含まないCuNiRの構造が明らかになったことで、クライオ電子顕微鏡による金属タンパク質の単粒子構造解析の重要性がより一層強調されました。

この成果は、国際学術雑誌であるJournal of Structural Biologyに掲載されました。

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