新材料の研究開発に有用な量子ビーム実験の計測効率を向上する手法を開発-量子ビーム実験の計測時間を従来の10分の1に短縮し、新材料の研究開発の加速を支援-

   
  • 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
  • 株式会社日立製作所

概要

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の小野 寛太准教授および株式会社日立製作所は、このたび、人工知能(AI)・機械学習にも用いられる統計手法を用いて、新材料の研究開発に有用な量子ビームを用いた材料評価の計測実験を効率化する手法を開発しました。 高機能材料の性能にはさまざまなスケールの微細な構造が大きく影響するため、その計測実験に多くの時間を要しています。特に、加速器などの大型設備を必要とする量子ビーム実験では、実験が可能な施設や機器の稼働時間が限られることから、実験の高効率化が求められていました。今回開発した手法を適用することにより、従来の10分の1の計測時間で取得したデータでも、従来と同等の精度を得ることが可能となり、大型実験施設での実験時間を有効利用でき、より多くの試料を計測することが可能となります。また、本手法は大学や企業の実験室にある一般的な実験装置へも広く適用できるため、材料評価に必要なさまざまな計測の効率化につながり、各種材料の研究開発が加速されることが期待されます。

なお、本実験は、トヨタ自動車株式会社と共同で推進し、今後、トヨタは、本研究成果を電気自動車(EV)など電動車のモーター向け新材料研究へ応用していく予定です。

研究内容と成果

今回、電動車のモーター向け新材料の研究開発に有用な量子ビーム実験の一つである、小角散乱実験で得られた、ナノスケールの構造情報を示す二次元強度分布データのばらつきを、AI・機械学習にも用いられる統計手法であるカーネル密度推定法を適用して抑制する手法を開発しました。 本手法を適用することで、短時間の測定で得られた低品質なデータを数倍~10 倍のレベルに高精度化することが可能となり、長時間を要していた計測を、従来の10 分の1 の時間に短縮することに成功し、量子ビーム実験における測定効率を向上させることが可能となりました。 試料や測定条件に合わせて統計手法を最適化することで、さらなる測定効率の向上が見込まれるほか、本手法を小型のX 線計測機器に適用することにより、従来、大型実験施設での計測が必須であった高精度の計測を、小型X 線計測機器で実施可能となることが見込まれます。

KEK、トヨタ、日立は2018 年10 月8 日に米国ミシガン州トラバースシティで開催された、小角散乱実験の研究者が一堂に集う国際会議「Small Angle Scattering 2018」において本手法を発表し、同内容は2019 年2 月6 日に英国学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。 なお、KEK、トヨタ、日立は2017 年9 月20 日に同内容を特許出願中です。また、本研究は、KEK と大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所 日野 英逸准教授との共同研究の成果も活用しています。

詳しくは プレスリリース をご参照ください。

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