KEKでは、毎年12月の終わりに、全国の高校生・高専生を対象に、本格的な研究体験を提供する、KEKウィンター・サイエンスキャンプを実施しています。
今年度は2025年12月23日から26日までの3泊4日の日程で開催しました。全国から23人の高校生・高専生が集まり、「素粒子」、「回折」、「加速器」、「放射線」をテーマにした4つのコースに分かれて、本格的な研究体験を楽しみました。
開講式
キャンプは23日の午後の開講式で幕を開けました。東 直(ひがし なお)校長(加速器研究施設)のあいさつにつづき、青木 優美(広報室)が、自らの経験を交えてKEKの研究を紹介する導入講義を行いました。

アイスブレイク


開講式の最後では、アドバイザーとして支援を行う高校の先生が用意した、アイスブレイクが行われました。
「アイスブレイク」とは、まだ出会ったばかりで凍り付いた雰囲気を温めて、参加者の皆さんが互いに打ち解けられるように用意された企画です。コースごとにグループとなって、空き缶に小さなおもちゃ入れて交換し、缶を振った時の音だけで中に何が入っているかを当てるゲームが行われました。いかに当てにくい組み合わせを入れるかを相談するうちに、自然に会話ができる和やかな雰囲気となりました。
アイスブレイク後には、いよいよ各班に分かれて実験を開始しました。
実習
Aコース:「素粒子」のコースでは、測定器の原理と基本的な測定方法を学んだあと、実際に宇宙線検出器を製作し、宇宙線の飛行速度測定に挑戦しました。測定器にかける電圧を決め、データを記録するタイミング調整を行うなど、実際の実験さながらの実習を行いました。


Bコース:「回折」のコースでは、レーザーポインターを使って、回折格子の格子定数と開口幅を決定する実験を行いました。光検出器で測定した回折ピークの位置と強度から格子のスリット幅を計算し、光学顕微鏡で測定した値と比較することで、光が持つ波の性質の理解を深めました。また、レーザーポインター出力の時間変化を測定して考察し、講師を驚かせていました。


Cコース:「加速器」のコースでは、クルックス管から放射される電子を偏向板の電場や電磁石の磁場で曲げることで、電子の質量測定を行いました。地道に磁場測定を行った結果、高い精度で電子の質量を推定することに成功しました。また、クルックス管の中のヘリウムガスの影響を議論するなど、深い考察を行いました。


Dコース:「放射線」のコースでは、自ら放射線検出器の回路を製作し、実際に放射線源から出てくる放射線を計測しました。また、線源と検出器の間に遮蔽物を挟み、その厚みや材質によって計測数が変化することを定量的に評価し、放射線防護に関する認識を深めました。


見学・交流
今回は、例年に比べて見学場所を増やし、筑波実験室 (Belle II検出器)、放射光実験施設(フォトンファクトリー)、コンパクトERL加速器、機械工学センター、超伝導低温工学センターの5か所を見学しました。各施設で行われている最先端の研究について、研究者から直接説明を聞く貴重な経験となりました。見学時間いっぱいまで、熱心に質問する姿が印象的でした。





夕食を共にしながらのレクチャーや親睦を深める交流会なども行いました。



研究発表会と閉講式
最終日には、取得したデータの解析、考察結果を小林ホールにて、各コースに分かれて発表しました。質疑応答も生徒主体で進行し、とても活気あふれる研究発表会となりました。



参加者の感想の一部を紹介します
「このキャンプを通して、物理の面白さを実感しました。実際、キャンプの間はかなり長い時間物理に触れましたが、私には3泊4日がまるで1日だけだったかのようでした。」
「実験は、厳密性を問われた本格的な実験でした。科学実験を行うときに譲ってはいけない領域が何となくつかめたと思います。 また、いろいろな同級生に出会うことが出来て、友達がたくさんできました。」
「実際にみんなで試行錯誤しながら装置の配置を考えて実験することはとても楽かった。実験は上手くいかないことばかりでしたが、最終的に、正解の一歩手前まで辿り着くことができてとても嬉しかったです。」
ウィンター・サイエンスキャンプは、科学技術振興機構(JST)の委託事業として2006年に始まりましたが、2015年からKEKの主催事業となりました。 2025年度は前年度に引き続き、寄附金による事業として実施しました。ご協力いただいた皆さまに感謝いたします。
KEKでは、本キャンプの他にも、生徒・学生向けのプログラムを実施しています。