理系女子キャンプ2022を開催しました

理系女子キャンプ2022の参加者とスタッフ

高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、例年春休みに女子高校生を対象とするスクール「理系女子キャンプ」を開催しています。これは、KEKの男女共同参画推進室とToshiko Yuasa Laboratory(TYL)が共同で企画する男女共同参画事業の一環で、お茶の水女子大学・奈良女子大学・東北大学大学院 理学研究科との共催です。

 

今年は、4月3日(日)~ 4日(月)にKEKつくばキャンパスに高校生30名が集まりました。理系女子キャンプは2012年に始まり今年で11回目ですが、COVID-19の影響で2020年と2021年はオンライン開催となったため、3年ぶりの現地開催となりました。プログラムを見直し、広い会場でマスクをつけるなど感染対策を徹底して行いました。野尻 美保子(のじり みほこ)校長による入校式挨拶からも感染対策への緊張感が感じられました。

 

1日目、全国から集まった高校1年生から3年生30名は、3人一組で霧箱作りと放射線の飛跡の観察・解析に挑戦しました。霧箱とは、飛行機の軌跡がひこうき雲として見えるように、放射線の飛跡を見ることができる装置です。アルコールが過飽和した状態を作ると、放射線が通ることによって電離した電子に他のアルコール分子が集まり細い雲ができるのを観察することができます。参加した生徒たちは救仁郷 拓人(くにごう たくと)特任助教の指導を受け、身近な材料を組み合わせて霧箱を自作しました。この霧箱は、名古屋大学 林 熙崇(はやし ひろたか)氏が考案したもので、自然放射線をよく観測できます。

 

参考ページ

名古屋大学理学研究科・素粒子宇宙物理系 F研 基本粒子研究室
見えないものを見る 放射線測定から物質の根源を探る (霧箱・応用編)

 

自作の霧箱を観察する生徒たち「ほら、ここに見えてる!」

 

特に、気体のラドンはポロニウムそして鉛に崩壊しますが、ポロニウム216の半減期は1秒よりもずっと短いため、2段階の放射性崩壊が同時に起こったように見え、原子から出る2方向の飛跡がV字型に見えます。手作りの装置で放射線が見えたことに感激して「かわいい!家に持って帰りたい!」と声をあげる生徒も。

 

会場にはさらに感度がいい大型の霧箱もあり、その様子を数分間撮影し、コマ送り再生することでポロニウム216の半減期を算出しました。1人が10の飛跡の時刻差を測定し、グループごとに片対数グラフにプロットして回帰直線を引きました。3人分のデータではばらついているように見えた値も、最後に30人全員分のデータを集めたところ、かなり正確な値が算出できました。実験グループは初対面同士でしたが、プログラムが進むにつれすっかり打ち解け、協力して実験や解析に臨んでいました。

 

参考記事:こちらは同じラドンの崩壊でも、ポロニウム216を経由しない崩壊のお話です。

【KEKエッセイ #22】ラドンの娘は寂しがり

 

霧箱ではこんな飛跡が見えます

 

グループごとに得たデータをホワイトボードに集約しました

 

 

夕食後には、女子大学院生とのパネルディスカッションが行われました。

 

テーマは「先輩研究者や大学院生、全国から集まった仲間と、研究のこと、学校のこと、将来の夢…何でも話してみよう。」というものです。ティーチングアシスタント(TA)として実験も手伝ってくれた大学院生3名が、それぞれ自分の研究や学生生活について話しました。生徒からは

「高校生の時にやっておいた方がいいことは?」

「理系女子で良かったこと、悪かったことは?」

「研究してみたいテーマについて、専門的な質問をしたいときどうすればいいか?」

などの質問があり、先輩たちがそれぞれ丁寧に答えていました。

 

2日目の午前は小林ホールにて、講義が行われました。まず初めに、前日に実験を行った放射線について、KEKの岩瀬 広(いわせ ひろし)准教授から解説がありました。続いて、大阪大学の岩田 夏弥(いわた なつみ)准教授から「高エネルギー密度プラズマの物理」、JAXAの廣瀬 史子(ひろせ ちかこ)研究領域主幹からは「宇宙開発の最前線」というテーマでそれぞれ講義が行われました。講義終了後の質疑応答では、みな積極的に自分の疑問を講師にぶつけていました。また、中には講義で説明されていない点を鋭く突いた生徒もいて、講義は盛り上がりを見せていました。

 

講義のあとに質問する生徒

 

天候はあいにくの雨でしたが、午後は15人ずつのグループに分かれ、KEKつくばキャンパスの実験施設を見学しました。

 

筑波実験棟では、地下に続く長い階段を下っていくと高さ約8mもあるBelle II測定器があり、その巨大さにみなそれぞれ写真撮影をしていました。施設内には共同で研究を行っている各国の国旗が掲示されており、ロシアとウクライナ両国の国旗もありました。解説をした研究者は、中には決して友好関係にない国同士もあると前置きしたうえで「研究に国境はない」と語りました。それを聞く未来の科学者たちの真剣なまなざしはとても印象深いものでした。

 

坪山 透 シニアフェローの説明を聞きながら 筑波実験棟を見学する生徒たち

 

西脇 みちる 准教授による加速器の説明を聞く生徒たち

 

フォトンファクトリー(PF)では、加速器研究者の解説とともに電磁石が円形に並ぶPF光源加速器の見学を行いました。また、光源加速器とビームラインでつながるPF実験ホール内も訪れ、PFで研究が行われる生命・材料・地球外物質など様々な分野の話を興味深く聞きました。

 

田中 オリガ 助教の案内でフォトンファクトリー光源加速器を見学する生徒たち

 

最後にフランス語で書かれた修了証が参加者に手渡されました。閉校後のアンケートには、「全国から集まった人たちと触れ合い、話し合うことができてとても楽しかったです!」という感想や、他の高校生と知り合って刺激を受けたという感想が多く見られました。

 

 

関連サイト

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