【KEKのひと #21】計算シミュレーションで粒子の世界の謎に挑む 松古栄夫(まつふる・ひでお)さん

計算科学センター助教の松古栄夫さん(撮影:高橋将太)
小さな素粒子の世界を計算機シミュレーションで再現するには、スーパーコンピューター(スパコン)のような大きな計算機が必要です。粒子の世界のシミュレーションをしながら、スパコンの運用も担当するKEK計算科学センター助教の松古栄夫さんにインタビューしました。

―現在どのような研究をされているのですか?

「クォークのような粒子同士が反応して、どの方向に飛んでいくか、どのくらいの確率で反応するかなどをコンピューター上で数値計算します。クォーク間に働く力に関する理論をQCDというのですが、それを計算するための『格子QCD』の計算プログラムを書いている時が多いですね。典型的な大きな計算機を必要とする計算です。最近は超新星爆発のシミュレーションもやっています」

―超新星爆発のシミュレーションはどのように行うのでしょう?

「核反応と重力がつり合って星が成り立っているのですが、核反応が尽きて支えきれなくなり、重力で縮まり、跳ね返って爆発するという流れが大体のイメージです。これをモデル化してシミュレーションするのですが、コンピューター上でなかなか爆発しない」

―爆発しない…というのは?

「計算しやくするために入れた近似を外していくと、爆発するようになります。でも実際に観測されている超新星爆発をちゃんと再現しようとすると、今の計算機では足りないのですね。これからできるもっと大きいスパコンに期待してます。」

―超新星爆発を研究され始めたのはいつごろからですか?

「私自身は7年前位からです。沼津高専や早稲田大学の人たちと一緒にやっています」

―KEKに来られたのはいつですか?

「14年前です。学部のころは広島大学で、物理の理論も実験も何でもやる研究室に所属して、数値計算で理論の研究をしていました。ポスドク(博士研究員)でドイツ・ハイデルベルクの研究所や大阪大学、京都大学の基礎物理学研究所を経て、KEKに入りました」

―一貫してテーマは数値計算なのですね。

「そうですね。QCDの計算では、20年前は『夢の計算』と言われていた、実際のクォーク質量に対応するような計算が、今はできるようになりました。ラーメンに例えるなら”(トッピング)全部のせ”みたいなものです」

―全部のせですか(笑)超新星爆発はまだラーメンで言えば具なしの素ラーメンみたいなものでしょうか?

「そうですね。今は空間を二次元にした計算が多いのですが、三次元でちゃんと計算できるようにならないと具が寂しい。もっと大きな計算機が欲しいです」

―夢の計算が実現できるようになったのは、コンピューターの性能が上がってきたからですか?

「コンピューターの性能が上がってきたのと、理論や計算法に対する理解が深まったことですね。だんだん精密計算ができるようになってきました」

―超新星爆発の謎の部分の解明は、これからが楽しみですね。ちなみにご趣味などは?

「バイオリンを17年、マラソンを14年やっています。本格的ではなく、惰性でやってるので上達しないのですが…」

―それでもすごいことですね。きょうはありがとうございました。

(聞き手 広報室・牧野佐千子)

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