【2024年度】第6回物構研コロキウム『X線誘発生体分子変化の追跡とマルチビーム利用への期待―基礎生物学から医療用薬剤開発に向けて―』

開催日時

2025/04/04(金)15:30〜16:30

開催場所

東海キャンパス1号館116室 & zoom

講演者

横谷明徳
量子科学技術研究開発機構 量子生命拠点特別コーディネーター
茨城大学 基礎自然科学野 クロスアポイントメント教授

言語

日本語

お問い合わせ

mihoiga@post.kek.jp


X線誘発生体分子変化の追跡とマルチビーム利用への期待
―基礎生物学から医療用薬剤開発に向けて―

放射線による細胞死や突然変異はゲノムDNAの不可逆的化学変化(損傷)に起因するとされ、生体影響の基礎生物学的な研究が実施されてきた。一方、放射線で効率よく変化する薬剤分子を開発することで、がんの新たな放射線治療法の開発も試みられている。どちらの場合においても、放射線の持つエネルギーがどのように分子内の化学結合の変化に変換されるのかを理解することが不可欠である。例えば化学結合切断のされやすさなどの性質は、分子固有の電子状態が大きく関与しているはずである。このような観点から、最近私たちは単色X線を分子損傷を導くための励起光源として使うと同時に、別波長の単色X線を化学結合の変化を追跡するための測定光として利用する研究を進めてきた。特に後者としてX線吸収分光(XAS)に加え、これまで生体分子にはあまり適用されてこなかったX線光電子分光法(XPS)を積極的に利用することで、さまざまな生体分子の興味深い電子物性を見出してきた。本講演ではそれらの中でも(1)ハロゲン化DNAが金属様の物性を発現すること、(2)光免疫治療薬剤をX線で活性化するためのケージド化合物の保護基候補分子を探索するため、内殻励起による特定結合切断の結果について解説する。