2025年
01/08
開催
開催日時
2025/01/08(水)15:30〜16:30
開催場所
J-PARC中央制御棟打ち合わせ室 + zoom
講演者
山根 功氏
言語
日本語
詳細ページ
お問い合わせ
佐藤 洋一 (PHS 4629)
J-PARC 400 MeV H−beamのp beamへの変換は、現在炭素薄膜により行われている。この場合、炭素原子による高エネルギー陽子の散乱で周辺の放射線レベルが高くなることや、薄膜が大強度陽子ビームに耐えられず寿命が短くなるなどの問題がある。このためLaser Strippingによる変換を検討する。
H−の2電子はH0の基底状態を構成する電子とそれに弱く付着する電子である。それらの電子の結合エネルギーは13.6 eV と0.755 eVである。
13.6 eVの光子の波長は91.1 nmである。この電子を直接剥離するためには実験室系で~200 nm程度のレーザーが必要であり、レーザー光学系の損傷が懸念される。このため、H0を一旦第一励起状態H0(励起エネルギー10.2 eV)に励起しそこから電子剥離する方法を検討する。
1光子でH0に励起する場合、2P substateが励起される。2P substateのレベル幅は~100 MHzである。H−beamは繰り返し周波数324 MHz、パルス長~100 psecのパルスとして供給される。したがって、レーザーパルスは繰り返し周波数324 MHz、パルス長~150 psecのパルスとして供給される必要がある。レーザーの光子エネルギーはH−静止系で10.2 eV、波長は121 nmである。実験室系では~250 nm程度となり、レーザー光学系の損傷が懸念される。また、このようなパルスレーザーの周波数分布は、モード間隔324 MHzの周波数コムを形成している。モード間隔はH−静止系では~700 MHzとなり、モード間では波長分布が非常に少なくなる。このため、多くのH0 が励起されず、したがって電子剝離されない。
2光子でH0*に励起する場合、2S substateが励起される。レーザーの光子エネルギーはH−静止系で5.1 eV、波長は243 nmである。実験室系では400 nmより長くなり、レーザー光学系の損傷の懸念は十分軽減される。また、2S substateのレベル幅はH0に電場を加えることにより広げることが出来る。レベル幅を~10 GHz程度に広げれば、レーザービームパルスが周波数コムを形成していても、多くの2光子の組み合わせがレベル幅に入り、効率よくH0を励起することが出来る。励起されたH0はもう一つの光子により電子剥離されるので、H0ビームは2光子励起+1光子電子剥離により効率よくpビームに変換される。
以上のことから、J-PARC 400 MeV H− beamのLaser Strippingは2光子励起+1光子電子剥離により行うべきである。