宇宙マイクロ波背景放射の偏光に「パリティ対称性」を破る新しい物理の兆候を観測-暗黒エネルギーの正体解明の糸口になるか?-

図:138億年前に放射された宇宙マイクロ波背景放射(図中左の円)の光の波(オレンジ線)の振動方向である偏光面が暗黒物質・エネルギーとの相互作用によってベータ(β)度だけ回転し、現在観測される光(図中右の円)になっています。回転により、偏光のパターン(円の中の黒線で描かれた模様)が変形して観測されます。図中円の色ムラは、宇宙マイクロ波背景放射の温度のムラ(温度ゆらぎ)を表しており、赤いほど高温に、青いほど低温になっています。©︎ Y. Minami/KEK


 

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)
マックス・プランク宇宙物理学研究所

 

概要

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所の南雄人博士研究員は、マックス・プランク宇宙物理学研究所所長の小松英一郎教授(及び東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU) 主任研究者)と共同で、欧州宇宙機関(ESA)のプランク衛星による宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光観測データを用い、宇宙を記述する物理法則がパリティ対称性を破っている兆候を、99.2%の確からしさで観測しました。

 

我々の宇宙は現在、未知の物質(暗黒物質)やエネルギー(暗黒エネルギー)によって支配されていますが、暗黒物質・エネルギーの正体はまだわかっていません。もしこれらがパリティ対称性を破り、CMB の光の波と相互作用をすると、CMB の偏光面は回転します。この偏光面の回転を観測するためには、検出器自体が観測対象に対してどれだけ回転しているか、精度よく較正する必要があります。これまでは検出器の回転に関する較正の不確かさが大きいため、観測精度が制限されていました。今回、銀河系内の塵が放射する光を利用して検出器を較正する新手法を開発し、プランク衛星のデータに適用することで、精度を2 倍に向上させました。これにより、パリティ対称性の破れの兆候を99.2%の確からしさで観測しました。これが発見と認められるには、99.99995%以上の確からしさが必要となるため、今後も検証が求められます。もし発見となれば、宇宙に満ちている暗黒物質や暗黒エネルギーの正体を明らかにする重要な手掛かりとなります。

 

この研究成果は、Physical Review Letters に11 月23 日(米国東部時間)に掲載されました。また、注目論文としてEditor’s suggestion に選定されました。Editors’Suggestion は編集者によって、特に重要で興味深く、よく書かれていると判断された論文が選ばれます。

研究成果のポイント

  • 宇宙マイクロ波背景放射の偏光観測で「パリティ対称性」の破れを測る新手法を開発し、プランク衛星のデータに適用

 

  • 暗黒物質や暗黒エネルギーの正体を明らかにするには、パリティ対称性を破る新しい物理の存在を調べるのが有力な手法だと考えられてきた

 

  • 今回、パリティ対称性の破れの兆候を99.2% の確からしさで観測

 

  • 例えば、暗黒物質や暗黒エネルギーの正体が「アクシオン場」であれば、このようなパリティの破れが見える可能性がある

詳しくは  プレスリリース  をご参照ください。